チタン合金|軽く高強度で弾性に富んだ材料

チタン合金

チタン合金は、チタン(Ti)にアルゴン(Al)、バナジウム(V)、すず(Sn)、モリブデン(Mo)などを添加して耐食性や機械的強度を向上させた合金である。とくに、アルゴン(Al)を加えることで、純チタンより強度が高まる。チタン合金は、鉄の1/2程度まで軽く、高張力鋼をこえるほど頑丈でさびにくいという性質を活かして、航空機、特に戦闘機の発展とともに開発が進められてきた。また耐熱性にも優れているため、ジェットエンジンのタービン部分で使用され、エンジンの軽量化に貢献している。その他、化学プラント、化学プラント容器、原子力関連機器、航空宇宙用部品で使われている。

物理的および機械的性質

チタン合金の密度は約4.4から4.8g/cm3であり、これは鉄の約60%という軽さである。それにもかかわらず、その引張強さは高張力鋼に匹敵するため、材料の強度を密度で割った値である比強度が実用金属の中で最高クラスに位置している。特に中高温域(約500℃程度まで)においてもその強度が低下しにくいという特性を持つ。また、表面に強固な酸化チタンの不動態皮膜を形成するため、海水や各種薬品に対してステンレス鋼を凌駕するほどの強力な耐食性を発揮する。さらに、非磁性であることや、線膨張係数が小さいことも、精密機器や特定の工業用途において有利に働く要素となっている。

TAF6400

TAF6400(Ti-6Al-4V)とは、64チタンともよばれ、チタン(Ti)にアルゴン(Al)を6%、バナジウム(V)を4%添加した合金である。α+β合金の代表で、高い強度をもち、構造用に多用されている。大きなスプリングバックと、優れた深絞り性を生かす成形加工条件を選定する必要がある。溶接方法はTIG溶接を用いる。

Ti-6Al-4V-ELI

Ti-6Al-4V-ELIは耐食性に優れたチタン合金で、船舶・海洋分野関連で広く用意られている。日本の深海潜水調査船「しんかい6500」の耐圧殻にも用意られていることで知られている。なお、ELIとは、不要な元素の含有量をきわめて低いレベルに抑えている(extra low interstitials)ことを意味する。

チタン合金の引張強さ

TAF6400:895MPa以上
TF550:550~750MPa

チタン合金

チタン合金は、アルミニウム(Al)を含有するα合金、アルミニウムとバナジウム(V)を含有するα+β合金、バナジウムを20%以上含有するβ合金と分類されている。

  • α型合金:六方最密充填構造(hcp)を持つα相からなる。アルミニウムやスズなどを添加しており、耐熱性と溶接性に優れるが、室温での塑性加工性はやや劣る。クリープ特性が良好なため、ジェットエンジンの部品などに適用される。
  • β型合金:体心立方格子構造(bcc)を持つβ相からなる。バナジウムやモリブデン、クロムなどを多量に含み、冷間加工性に優れ、熱処理(時効処理)によって鋼を上回る極めて高い強度を得ることができる。ばねや航空機用ファスナーとして利用される。
  • α+β型合金:α相とβ相の両方の組織を常温で併せ持つ。代表的なものとして「Ti-6Al-4V(通称64チタン)」があり、強さ、延性、靭性のバランスが非常に良く、全チタン合金の使用量の約70%から80%を占めている。熱間鍛造性にも優れ、幅広い用途で活用される標準的な合金である。

主要な適用分野

その卓越した性能から、チタン合金は多様な分野で不可欠な材料となっている。航空宇宙産業では、機体の構造材、エンジンのコンプレッサーブレード、ランディングギアなどに多用され、軽量化と燃費向上に大きく貢献している。また、人体に対する毒性が極めて低く、金属アレルギーを起こしにくいという特性から、人工関節、デンタルインプラント、骨固定用のボルトといった医療分野でも広く普及している。近年では、スポーツ用品や高級腕時計のケースなど、軽量性と意匠性が求められる民生品への応用も進んでいる。

製造および加工上の課題

数多くの優れた特性を持つチタン合金であるが、製造業においては代表的な難削材として知られている。その理由として、まず熱伝導率が著しく低いため、切削加工時に発生する摩擦熱が逃げにくく、刃先の温度が極端に上昇して工具寿命を著しく縮める点が挙げられる。また、化学的に活性な金属であるため、高温になると工具材と反応しやすく、切りくずが刃先に溶着しやすいという問題もある。さらに、ヤング率(縦弾性係数)が低いために加工中に材料がたわみやすく、寸法精度を確保することが難しい。これらの課題を克服するためには、専用の超硬合金工具の使用や、剛性の高い工作機械の選定など、高度な加工ノウハウが要求される。

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