ダイヤモンド焼結体
ダイヤモンド焼結体(PCD:Polycrystalline Diamond)は、人工ダイヤモンドの粉末結晶を高温高圧下で焼結した材料で、セラミックスや超硬を超える極めて高い硬度を持っている特徴がある。天然のダイヤモンドに比べてコストを抑えつつ、高い硬度と耐摩耗性を持つため、切削工具や研削工具、耐摩耗部品として多くの産業で利用されている。ダイヤモンド焼結体は、微細なダイヤモンド粒子を高温・高圧下で焼結させたもので、単一の結晶構造ではなく、多結晶構造を持っていることが特徴である。
ダイヤモンド焼結体の特徴
ダイヤモンド焼結体の最大の特徴は、その非常に高い硬度と耐摩耗性である。天然ダイヤモンドに匹敵する硬度を持ちながら、脆性が低く、工具としての寿命が長い。また、多結晶構造を持つことで、天然ダイヤモンドに比べて異方性(方向による性質の変化)が少なく、均一な性能を発揮する。これにより、複雑な形状の加工や高精度の切削が要求される場面でも安定した加工が可能となる。
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— 株式会社 小林ダイヤ (@kobayashi_dia) March 3, 2023
ダイヤモンド焼結体の製造方法
ダイヤモンド焼結体は、高圧高温(HPHT)技術を用いて製造される。このプロセスでは、ナノサイズのダイヤモンド粉末を金属結合材とともに、非常に高い圧力(数GPa)と温度(数千度)にさらすことで、ダイヤモンド粒子を互いに結合させて硬く緻密な材料を作り上げる。使用される金属結合材には、主にコバルトやニッケルが含まれており、これがダイヤモンド粒子同士の結合を助け、耐久性を向上させる役割を果たす。
ダイヤモンド焼結体の用途
ダイヤモンド焼結体は、特に高精度な切削加工が必要とされる金属加工や、耐摩耗性が要求される部品の製造に利用される。自動車産業や航空宇宙産業、電子部品製造において、硬度の高い素材を精密に加工するための工具として使用される。また、非鉄金属やセラミックス、プラスチックなどの難加工材料に対しても、ダイヤモンド焼結体工具は優れた性能を発揮する。
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— 「微細・精密加工」大好きな町工場 松浦製作所 (@bisai_matsuura) May 20, 2022
ダイヤモンド焼結体のメリットと課題
ダイヤモンド焼結体の主なメリットは、その耐摩耗性と長寿命にある。これにより、工具の交換頻度が減り、加工コストが抑えられる。また、高温でも硬度を保持するため、高速切削など過酷な条件下でも安定した性能を発揮する。一方で、非常に硬いがために衝撃に弱いという課題もあり、衝撃や急激な負荷がかかる環境での使用には適していない。また、製造コストが高いため、比較的高価な工具となる。