シーリング材
シーリング材は建築・土木・機械設備において目地やすき間を充填し、雨水浸入や空気漏れ、音・振動の伝播を抑えるための可とう性材料である。英語ではsealantと呼び、汎用の「コーキング材」と同義に扱われることが多い。被着体の伸縮・振動・温度変化に追従する弾性が要求され、接着性、耐候性、耐水性、汚染の少なさ、塗装適合性などの総合性能で評価される。用途は外装カーテンウォール、ガラスまわり、コンクリート打継ぎ、金属屋根、配管貫通部など広範である。
定義と機能
シーリング材は「目地に充填して二面接着で可動を許容しつつ、止水・気密・遮音・緩衝を実現する材料」と定義できる。伸長・圧縮に対する許容可動量(%)が重要指標であり、温度差や躯体変形による目地幅変動を吸収する。低弾性(低モジュラス)品は追従性に優れ、外装や大可動目地に向く。高弾性(高モジュラス)品は荷重支持や床目地、機械まわりに使われる。
主成分系と特性
シーリング材は主にシリコーン系、ポリウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系、変成シリコーン(MS)系、ブチル・アスファルト系などに分類される。シリコーンは耐候・耐熱・耐寒に優れるが塗装が載りにくいものが多い。ウレタンは塗装適合と機械的強度に優れるが耐候で配慮がいる。MSは総合バランスが良く外装汎用として普及している。ブチル・アスファルトは非硬化〜可塑性で止水用途に強い。
一成分・二成分タイプ
一成分は空気中水分硬化や溶剤蒸発型で施工性が高い。二成分反応硬化型は硬化管理がしやすく厚充填や寒冷時でも安定し、大規模目地や工場・土木で用いられる。
性能の見方
- 許容可動量(例:±25%など)
- 弾性回復・モジュラス(低・中・高)
- 耐候・耐水・耐薬品・耐汚染(ノンブリード性)
- 押出し性、サグ(非垂れ)、スキンタイム、硬化深さ
- 塗装適合性、カビ抵抗性、防火適合
設計と目地形状
基本は二面接着で三面接着を避ける。バックアップ材(発泡ポリエチレン等)やボンドブレーカーを入れて目地底を切り離す。一般に目地幅:深さは2:1程度が目安で、狭すぎると破断しやすく、深すぎると剛性が上がり追従性が落ちる。被着体はコンクリート、ガラス、アルミ、めっき鋼板、ステンレスなどで下地の清掃・脱脂・乾燥が前提となる。
許容可動量の概算
設計目地幅Wに対し、最大伸縮ΔWが発生する場合、必要可動率=ΔW/W×100(%)で求め、これを上回るグレードを選ぶ。温度差、乾燥収縮、施工誤差を加味して決める。
施工手順と品質管理
- 下地処理:清掃・脱脂・乾燥。粉じん・レイタンス除去。
- 養生・バックアップ材挿入・ボンドブレーカー貼付。
- プライマー塗布:被着体と材料の組合せに適合するものを選定。
- 充填:気泡混入を避け、底から連続押出し。
- ヘラ押さえ(ツーリング):界面への濡れ広がりを確保。
- 養生管理:スキン形成〜硬化までの防雨・防塵。
検査項目
見た目の平滑性、端部の密着、目地寸法、サグ、ピンホール・気泡の有無、付着試験(簡易プルオフ)などを確認する。
劣化メカニズムと対策
代表的な劣化は、紫外線・熱による硬化・亀裂、可塑剤ブリードによる汚染、界面の剥離、黄変、カビ汚染である。対策としてはノンブリードタイプの採用、適合プライマー使用、適正な二面接着、汚染低減グレードや防カビグレードの選定が有効である。改修では既存材の完全撤去と下地補修のうえ、適合材で打替える。
選定のポイント
- 用途:外装、開口部、床、水まわり、設備貫通、耐火区画 など
- 被着体:コンクリート、ガラス、金属、樹脂、石材
- 環境:屋外直射、低温高温、薬品・油ミスト、塩害
- 仕上げ:塗装の有無、汚染許容、意匠(変色・艶)
- 施工:一成分か二成分、硬化速度、作業温湿度
代表的な適用例
カーテンウォール目地には低モジュラスのシリコーンまたはMS、床・プラント設備には高モジュラスや耐油性グレード、内装・塗装仕上げ部には塗装適合のウレタンやMSが選ばれる。耐火区画貫通には耐火認定を取得した耐火シーラントを用いる。
安全・環境と法規への配慮
シーリング材の多くは低VOC化が進むが、溶剤型や二成分硬化剤では換気・PPEが必要である。はみ出し材の拭き取り溶剤、プライマーの成分にも留意する。屋上や金属屋根など雨水が流れる部位では汚染・塗膜ふくれのリスクを評価し、相溶性情報を事前に確認する。
関連する部材・周辺知識
目地の耐久性は被着体の選択や留め付け方法にも依存する。例えば金属パネルの固定に用いるボルトの設計、ガラスの支持方式、下地防水層の選定が、目地への応力や漏水経路に影響する。設計・施工・維持管理を一体で考えることが重要である。
用語と試験の要点
- 二面接着:目地側壁のみに接着させ、底面は非接着とする。
- バックアップ材:深さ調整と三面接着回避のための充填材。
- スキンタイム:表面が皮張りするまでの時間。
- ノンブリード:可塑剤の表面移行が少なく、汚染を抑える性質。
- 付着試験:界面破壊の有無や凝集破壊割合を見る簡易検査。
以上のようにシーリング材は、材料特性だけでなく、目地設計・下地処理・施工管理の三位一体で性能が決まる。適用環境と仕上げ要件、維持管理計画を踏まえて系統(シリコーン、ウレタン、MSなど)とグレード(可動量・モジュラス・汚染性)を選定し、適切な二面接着と品質管理により長期耐久を実現するべきである。