クレタ文明
クレタ文明は、前2000~前1400年頃に、クレタ島を中心に海上交易で栄えた青銅器文明である。民族系統は不明だが、小アジアのアナトリア方面からやってきた青銅器文化を持っている民族であると考えられている。クレタ人は、クレタ島などに移住し、いくつかの小王国を形成した。オリエント文明の影響を受けているが、宮殿には城壁がなく、海洋動物や人間を写実的に描いた壁画や壺絵などから、開放的性格がうかがえる。ミケーネ文明を築いたアカイア人の侵入で滅亡を迎えた。
ミノス
ミノスは、ギリシア神話に登場するクノッソス宮殿に住んだ伝説の王である。クレタ文明を発見した考古学者エヴァンズはクレタの王ミノスの名をとって、クレタ文明をミノス文明とも呼ぶ。
クレタ人
クレタ人はクレタ文明をになった民族である。残されたクレタ文字が未解読なため、民族系統や社会組織など不明な点が多い。クレタ人は強力な艦隊をつくってエーゲ海の航行権を握り、エジプトや南イタリアなどとの交易もさかんにおこなっていた。
クレタ文字(絵文字・線文字A)
クレタ文明では、初期の時代から絵文字(象形文字)を使った。のちにこの絵文字から線文字Aを生み出し、絵文字と併用して使われた。絵文字・線文字Aは未解読であり、したがってクレタ王国の社会についてはよくわかっていない。(ついでミケーネ文明では線文字Bをつかった。)
クノッソス
クノッソスははクレタ島北岸に位置するクレタ文明の中心地である。クノッソス、マリア、ファイストスなどの小王国があったが、クノッソスがもっとも力をもち、前2000年頃にはクレタ島を統一した。壮大な宮殿があり、そこに多くの小部屋・廊下が複雑に配置されていたため、伝説上のミノス王が建てた迷宮(ラビリントス)にも擬せられた。動物、特にイルカなどの海洋動物や人間たちをいきいきと描いた壁画にはオリエントにない開放性がみられる。王宮が城壁を持たず、クレタ文明が安定したことを示唆している。クノッソスは、クレタ文明の破壊後も前1200年頃までミケーネ文明の拠点として栄えたとされる。
ルタ王国
ルタ王国は、クレタ島を中心にクレタ文明になった王国である。前20世紀からギリシア地方に南下したアカイア人に滅ぼされた。アカイア人は、クレタ文明を淘汰した後、ミケーネ文明を建てた。
テラ島
クレタ島の北のテラ島(現在のサン=トリーニ島)にもクレタ文明と似た文明が栄えていた。大きな牛を飛び越える曲芸や、「パリジェンヌ」と呼ばれる女性の絵などが知られるが、テラ島は前1500年ころ火山の爆発で大半が水没した。これはプラトンなどが論じたアトランティス大陸伝説の元になったと推測されている。