クォート・ドリブン
クォート・ドリブン(Quote Driven)とは、金融市場における取引方式の一つであり、取引価格がマーケットメーカーやディーラーによって提示された買値(ビッド)と売値(アスク)によって決定される市場を指す。この方式では、取引価格は市場参加者の注文に基づくのではなく、マーケットメーカーが提示する価格に依存するため、「クォート(見積もり)」によって取引がドリブン(駆動)される形となる。
クォート・ドリブン市場の仕組み
クォート・ドリブン市場では、マーケットメーカー(ディーラー)が常に買値と売値を提示し、その価格で投資家は取引を行うことができる。マーケットメーカーは、買値と売値の差であるスプレッドを利益として得る。この方式は、取引が少ない銘柄や流動性が低い市場で多く見られる。投資家は、提示されたクォートに応じて売買を行うことができるが、その価格はマーケットメーカーが設定するため、注文が直接市場価格に影響を与えるわけではない。
クォート・ドリブン市場の特徴
クォート・ドリブン市場には、いくつかの特徴がある:
- **マーケットメーカーの存在**: 市場の価格形成はマーケットメーカーが担い、彼らが提示する価格が取引の基準となる。
- **スプレッド**: 売値と買値の差であるスプレッドがマーケットメーカーの利益源となり、取引コストに影響を与える。
- **流動性の提供**: マーケットメーカーが常に売買の価格を提示することで、市場に流動性を提供し、取引が円滑に行われる。
クォート・ドリブン市場のメリット
クォート・ドリブン市場には、いくつかのメリットがある:
- **流動性の確保**: マーケットメーカーが常に取引価格を提示するため、投資家はいつでも取引を行うことができ、流動性が確保される。
- **価格の安定性**: マーケットメーカーが価格を設定するため、取引価格が極端に変動するリスクが低減され、価格の安定性が保たれる。
- **少額取引のサポート**: 流動性が低い銘柄でも、マーケットメーカーが関与することで、少額の取引がサポートされる。
クォート・ドリブン市場のデメリット
一方で、クォート・ドリブン市場にはいくつかのデメリットも存在する:
- **スプレッドコスト**: マーケットメーカーの利益源であるスプレッドが広い場合、投資家にとって取引コストが高くなる可能性がある。
- **透明性の欠如**: マーケットメーカーが価格を決定するため、オーダーブック(注文状況)を公開するオーダー・ドリブン市場と比較して、価格の透明性が低いことがある。
- **価格操作のリスク**: マーケットメーカーが市場価格に大きな影響を与えるため、価格操作のリスクがある。
クォート・ドリブン市場の例
クォート・ドリブン市場の代表的な例として、外国為替市場(FX市場)や一部の債券市場が挙げられる。これらの市場では、マーケットメーカーが通貨ペアや債券の価格を提示し、その価格で取引が行われる。流動性の低い銘柄や取引量が少ない市場では、クォート・ドリブン方式が採用されることが多い。
クォート・ドリブンとオーダー・ドリブンの比較
クォート・ドリブン市場と対照的なのが、オーダー・ドリブン市場である。オーダー・ドリブン市場では、投資家の売買注文が直接価格形成に反映され、取引所のオーダーブックに基づいて取引価格が決定される。オーダー・ドリブン市場は、透明性が高く、価格操作のリスクが低いが、流動性が低い場合、価格が大きく変動することもある。