オーファンブロック
オーファンブロックとは、ブロックチェーン上でブロックとして生成されながらも、その後のチェーンに組み込まれず孤立してしまうブロックを指す言葉である。通常のブロックと同様にマイニング作業によって発見されるが、ネットワークの競合や伝搬タイミングの差などによって正当なチェーンから外れた形で扱われることがあるため、一連の取引承認には反映されない点が特徴となっている。
概要
ブロックチェーンでは複数のマイナーが同時並行的にブロックを生成するため、同時期に発見されたブロックがネットワーク内で競合を起こす場合がある。多くの場合、最終的にマイナーやノードが支持する最も長いチェーンにブロックが連なる形で合意されるが、他方のブロックはオーファンブロックとして排除される。これは「孤立したブロック」とも呼ばれ、最終的には仮想通貨の送受信記録にカウントされない。
生成の仕組み
オーファンブロックは通常、ほぼ同時に2人以上のマイナーが有効なブロックを発見し、ネットワークに伝搬したときに起こりやすい。初めは両ブロックとも正当とみなされるが、次のブロックがどちらかのチェーンに追加された段階で一方のチェーンが優勢となり、他方のブロックが孤立化する仕組みである。ブロック承認は多数派のチェーンを正とする設計のため、劣勢となったブロックは自然と利用されなくなっていく。
ブロック報酬への影響
仮にオーファンブロックを発見したとしても、最終的にそのブロックがチェーンに組み込まれなければ、マイナーはブロック報酬を得ることができない。マイニングは高価な電力消費と設備投資を必要とするため、孤立ブロックの発生はマイナーにとって痛手となる。競合状況が頻発すると、単に運やネットワーク接続の良し悪しによって報酬の獲得確率が変動するため、マイナー同士の競争を厳しくしている。
孤立ブロックとUNCLEブロックの違い
Ethereumなどの一部ブロックチェーンでは、オーファンブロックに相当するものをUNCLEブロック(またはオムmerブロック)として別途報酬を与える仕組みが導入されている。これは無駄な計算リソースの発生を緩和し、セキュリティ確保に貢献したマイナーを一定程度報いる狙いがある。ただし、ビットコインなど従来の仕組みを踏襲する通貨ではUNCLEブロックの概念は採用しておらず、孤立したブロックに対しては原則として報酬は付与されない。
ネットワーク負荷と伝搬時間
強固なブロックチェーンを維持するには、全ノードが迅速かつ正確に情報を共有することが重要である。通信環境が悪かったりノード数が増大しすぎたりすると、ブロックの伝搬速度にばらつきが生じてオーファンブロックが発生しやすくなる。マイニングプールの集中化や地理的な距離も影響を与えるため、効率的なブロック伝搬プロトコルの採用やネットワークインフラの強化が課題とされる。
取引の安全性との関係
ユーザーの送金がオーファンブロックに含まれた場合、その取引は承認が取り消されるわけではなく、ネットワークが優勢と認めたチェーンに再取り込まれるまで少々時間がかかる可能性がある。最終的には多くのブロックが重なって確定されたチェーンが正当性を担保するため、取引そのものが無効になることは基本的にない。ただし、一時的に承認待ちの状態が長引く場合は混乱が生じる可能性があるため、多くの取引所では複数ブロックの承認を待ってから残高に反映させている。
出現頻度とブロックサイズの影響
ブロックサイズが大きくなるとブロックの伝搬に時間がかかりやすくなり、それによってオーファンブロックの発生率が上昇すると考えられている。特にビットコインやビットコインキャッシュなどブロックサイズの議論が活発な通貨では、単にブロックを大きくすれば送金詰まりを解消できるというだけでなく、孤立ブロック増加に伴うマイナーのリスクも議論の焦点となる。エコシステム全体の安定性やマイナーの利益を両立させるためには、適切なトレードオフを探る必要がある。
総合的な位置づけ
オーファンブロックの存在は、ブロックチェーンの合意形成が競争原理に基づいていることを端的に示している。無数のマイナーが正しい答えを同時に導き出す可能性がある以上、孤立ブロックは不可避ともいえる現象である。ネットワーク全体としては最終的な整合性を保ちつつ、柔軟な調整機能を働かせる仕組みがブロックチェーンの強さの一端を担っている。