UASF
UASF(User Activated Soft Fork)とは、ビットコインのプロトコル変更を利用者の支持によって実施しようとする仕組みである。通常、ビットコインのソフトフォークはマイナー主体で合意形成が進められるが、UASFにおいてはネットワーク上のノード運営者やユーザーが特定の規則を積極的に採用することで、新仕様に準拠しないブロックを拒否する方針をとる。これによりマイナーだけでなく、ユーザーが主体的にアップグレードを推し進めることが可能となり、開発コミュニティやマイナーとの間で新たな合意メカニズムを形成する手段として注目を集めた歴史を持つのである。
背景
ビットコインのアップグレードは本来、複数のステークホルダーによる合意形成を通じて行われるが、マイナーの投票が過剰な影響力を持つとの指摘があった。そこで、利用者側も主導権を持って提案を実現しようとする考えが浮上し、UASFが生み出されたのである。これは2017年ごろに行われたSegWit導入を巡る議論で顕在化し、マイナーの採掘パワーによるブロック承認の偏りを避け、ネットワーク利用者の意思を反映させる一手段として注目された経緯がある。
仕組み
UASFでは、ノード運営者があらかじめ新しい規則を実装したソフトウェア(例: BIP148)を導入し、その規定時期を過ぎた後は新仕様を満たさないブロックを拒否する。もしマイナーが従来ルールのままマイニングを続けた場合、それらのブロックはネットワークから排除されるため、マイナーはユーザーの要求に従わざるを得なくなる可能性が高いのである。こうした強制力によって利用者主体のプロトコル変更を実現する点が特徴であり、マイナー主導のソフトフォークとは対照的である。
優位性と懸念
UASFは、マイナーの支持が得られなくても利用者側がアップグレードを進められる点がメリットといえる。これによりネットワークの分散性を高め、特定のプレイヤーに権限が集中する状況を緩和し得る可能性がある。しかし一方で、マイナー側との意見対立が深刻化するとブロックチェーンの分岐が起こり、新旧チェーンが併存するリスクが生じるのである。この状況が長引けばユーザー間やマイナー間での混乱が拡大し、ビットコイン全体の価値や信頼性に影響を及ぼす恐れがあると指摘されている。
具体例
2017年に提案されたBIP148はUASFを代表する取り組みとして知られる。SegWit導入を巡る対立が深まる中、ユーザー主体で「一定期日以降にSegWit対応ブロック以外を拒否する」という強硬な方針が示されたのである。結果的には大きな分裂を回避し、マイナーもSegWitブロックを承認する流れに落ち着いたが、ユーザーがプロトコルの進化をリードできることを示す例としてビットコイン史に残るケースとされる。
ノード運営者の役割
UASFの成功には多数のノードが新しいルールを受け入れ、非対応ブロックを拒否する行動を取る必要がある。これは単にソフトウェアをアップデートするだけでなく、対立が生じる場合にはノード運営者がチェーン分岐のリスクを被る覚悟を伴う。ビットコインはP2Pネットワークであるため、マイナーだけが決定権を握るわけではないことを示す好例とも言えるが、その反面、ノード間の協調行動が得られないと最終的にフォークを引き起こしかねない点にも留意が必要である。
ビットコインガバナンスへの示唆
マイナー主導でのプロトコル変更がスタンダードとなっていた中、UASFの登場はビットコインコミュニティに新たな合意形成モデルの可能性を示したのである。技術的にはソフトフォークの一手法であっても、その背後にある意義はネットワークの分権化と多様な利害調整のあり方を再考させる契機となった。今後もユーザーがプロトコル開発に積極的に関わる流れが続けば、ビットコインのガバナンスモデルに一層の進化がもたらされるであろうと期待されている。