TxIn
TxInとは、Bitcoinをはじめとするブロックチェーンのトランザクションにおいて、送金元となる未使用トランザクション出力(UTXO)を参照し、仮想通貨の移転を可能にする入力部分を指す概念である。暗号資産のやり取りは複数の入出力で構成されるが、TxInはその中でも「どのコインを使うか」を特定し、必要な署名スクリプトなどを含む重要な構成要素となっている。適切なUTXOを指定し、正当な署名が含まれていれば、ブロックチェーン上で資金移動が認められる仕組みである。
概要
Bitcoinのトランザクションは「入力(TxIn)」と「出力(TxOut)」に大別される仕組みになっている。TxInは特定のトランザクションID(TxID)のうち、どの出力を再利用するかを示すリファレンス情報と署名スクリプト(scriptSig)を含む。これによって自分が所有権をもつUTXOを消費できるかどうかを検証することが可能となっている。各入力は対応する出力を1回限りしか使うことができず、二重支払いを防止する基本的なルールを担う。これらの入力情報が正しく署名され、ブロックチェーン上で承認されると、新たなTxOutを生成してコインが送付される形となる。
構成要素
TxInを構成する中心的な要素は以下の通りである。まず、トランザクションID(TxID)とそのトランザクション内での出力インデックス番号(vout)がある。これは過去のトランザクションのどのUTXOを参照しているかを明確にするために利用される。次に、scriptSigと呼ばれる署名スクリプトが含まれており、秘密鍵の署名などを通じて支払いの正当性を証明する役割を果たす。最後にシーケンス番号が定義されており、これはReplace-By-Fee(RBF)やTimeLockなどの高度な機能に関連するフィールドである。
UTXOとの関係
ビットコインはUTXOモデルを採用しているため、現在使えるコインはすべてブロックチェーン上のどこかにある使われていない出力として管理される。TxInは、そのUTXOを消費するための「入り口」として機能し、ウォレットソフトやノードは参照先の残高が有効かどうかを確認する。もしUTXOがすでに別のトランザクションで消費済みであれば、重複使用(ダブルスペンド)として無効となる。こうしたUTXOとTxInの紐づけが正しく行われることで、支払い履歴が不変かつ透過的に記録され、二重支払いの回避と検証可能性が確保される仕組みとなっている。
署名スクリプト
署名スクリプト(scriptSig)は、TxInに格納される署名データや公開鍵などを含む部分である。このスクリプトはUTXOのアンロックに用いられ、対応するTxOut側のロック条件(scriptPubKey)を満たすかどうかを検証される。具体的には、所有者が秘密鍵を使って作成した署名が正当であるかをノードがチェックし、合致しない場合はトランザクション全体が無効とされる。scriptSigを正しく構築することにより、自分が送金元コインを本当に所有していることを暗号学的に証明することができる。
検証プロセス
トランザクションの検証プロセスでは、まず各TxInが参照するUTXOが実在し、未使用であるかどうかが確認される。その後、scriptSigとscriptPubKeyを組み合わせて署名検証と条件チェックが行われ、承認に問題がなければマイナーやノードがトランザクションをブロックに取り込む。もし検証に失敗する場合はトランザクション全体が拒否され、ブロックチェーン上に取り込まれることはない。このようにTxInの正当性はBitcoinネットワークの安全性とトラストレス性を維持する核心部分を担っている。
運用上の注意点
ウォレットを利用する際、ユーザーが直接TxInを編集することはほとんどないが、カスタムトランザクションを構築するプログラムやアプリケーション開発においては細心の注意が必要である。誤ったUTXOを参照してしまうとトランザクションが無効になったり、秘密鍵が間違っている場合は署名が通らない結果となったりする。さらに、手数料計算にもTxInのデータサイズやUTXO数が影響するため、大量のUTXOを扱うトランザクションは手数料が高くなるケースも見られる。こうした点を考慮しつつ、最適な入力と出力のバランスを検討することが開発の上では望ましい。