PGA(挿入実装型パッケージ)|多数のピンを基板ソケットへ挿入して接合するICパッケージ

PGA(挿入実装型パッケージ)

電子部品を基板上に固定する技術の一つであるPGA(Pin Grid Array)は、ICや半導体を多数のピンによってソケットあるいは基板へ物理的に挿入して接合する構造を持つパッケージ技術である。主にCPUなど高ピン数が求められる高集積デバイスに用いられ、熱分散や保守性、機器の拡張性を確保しながら安全に接続を行うことが可能であり、信頼性の高い実装方式として歴史的にも広く採用されてきた。

概要

多くのピンを正方形や長方形の格子状に配置し、それらを基板上のソケットに挿し込む形で取り付けるのがPGAの特徴である。ピン数を増やすことで信号線の多様化や電力供給の向上を図る一方、物理的に頑丈な接続が得られるため、取り扱いが容易でメンテナンスもしやすい。そのため、パーソナルコンピュータやワークステーションなどの分野で多用されてきた歴史を持ち、挿抜交換による互換性の確保という点で大きなメリットをもたらしている。

構造と特徴

基板に取り付けられるソケットは多数の穴やスプリングコンタクトを備え、それに対応するPGAパッケージはピンを立体的に配列しているため、デバイスを上から押し込むだけで物理的かつ電気的な接続が確立される。ピンの形状は真っ直ぐな金属柱から針状のものまであり、実装時の位置合わせが容易なようにガイドや切り欠きが工夫されている。実装面積は比較的大きくなるものの、信号の独立性が高く、熱を逃がすための放熱機構を組み込みやすい点が利点となっている。

利点と課題

ソケットを介した着脱が容易なPGAは、メンテナンス性や交換性が高いだけでなく、ハンダ付けによるリフロー工程を簡略化できるというメリットがある。一方で、多数のピンを扱うために基板設計の自由度が制約されることや、誤挿入によるピン曲がりなどのリスクも無視できない。ピン一本あたりの抵抗やインダクタンスの管理、製造コストの上昇といった面が課題となり、大量生産や小型化を求める分野ではほかのパッケージ方式への移行が進む要因にもなっている。

製造技術と実装手法

強度と導通性を両立させるため、PGAのピンには金メッキなどの表面処理が施され、高信頼の接触が得られるよう設計されている。多層配線基板と組み合わせる場合には、各ピンを通じてシグナル層や電源層に適切につなぐためのビアや配線が配置され、ピンの配置パターンを最大限活用する形で設計される。さらに、高性能なデバイスほど放熱設計が重要になるため、ヒートシンクやファンを組み合わせて熱を排出する形態が一般的に用いられる。

ほかのパッケージとの比較

表面実装技術(SMT)の主流化に伴い、BGA(Ball Grid Array)やQFP(Quad Flat Package)など、はんだボールやリードで基板に直接接合するパッケージが普及している。これらはPGAと比べて小型・軽量化が進み、大量生産に向くというメリットを持つ。しかし、着脱やアップグレードの容易さ、部品交換の即応性など、ソケット実装ならではの利点は依然として一定の評価を得ており、高信頼・高性能領域ではPGAが選択されるケースも多い。

応用分野

従来のパーソナルコンピュータ用CPUや高性能マイコン、産業用制御機器などでPGAはその高ピン数と堅牢な接触を活かし、長期運用やメンテナンス性を重視する環境で使われてきた。現在はBGAなどのパッケージが主流となりつつあるものの、研究開発用の評価ボードや特殊機能を統合したモジュール、あるいはカスタムソリューションなど、依然としてピン配列による優れた配線しやすさや柔軟性を重視する分野で利用が続いている。

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