Iddq|スタンバイ電流による微細欠陥検出手法

Iddq

Iddqは、集積回路(IC)のスタンバイ時に流れる電流を指す用語である。一般的にはテスト工程における故障検出の指標として用いられ、微細化が進む半導体製造においても重要な品質管理手法のひとつとなっている。本稿ではその概要から測定手法、さらには応用分野について概説する。

概要

Iddq(I=電流、dd=電源電圧、q=クワイエットの略とされる)は、ICが動作していない状態、すなわち論理回路が静止しているときに消費する電流を示す。通常の回路動作では消費電力を最小化するため、スタンバイ時の電流は極めて小さい値に抑えられるのが理想である。しかし製造段階で微細な欠陥が混入するとリーク電流が増加し、結果としてIddq値の異常上昇を招く。これにより、従来の機能テストでは検出が難しかった欠陥を発見できるとして注目を集めてきた。

測定手法の特徴

テスト工程では、まずICに電源を投入して特定の入力パターンを与え、出力が安定した状態でIddqを測定する。故障がない場合はスタンバイ状態に近い値となるが、配線の短絡やゲート酸化膜の破損などの物理欠陥が存在すると、測定値が大幅に高くなる。測定には高精度の電流計やテスト装置が必要であり、測定環境のノイズや温度変化を厳密に制御することが求められる。特に深いサブミクロン領域に入ると、トランジスタそのもののリーク電流も増えるため、正常動作時のIddq基準値をどう設定するかが課題となっている。

導入のメリット

Iddq測定を導入する最大の利点は、微小な製造欠陥を高感度に検出できる点である。従来のデジタル機能テストでは論理パターンの合否判定が主流であり、タイミング違反や大規模なオープン故障は検出しやすい一方、微細なリーク経路が存在しても正常動作してしまうため見落としが生じる可能性があった。一方でIddqテストは消費電流を定量的に評価するため、機能的には正常に見える不良品を効率的にあぶり出すことができる。また、スタティックな測定であるため、大量生産ラインでも比較的短時間で実施できるのが特長となっている。

応用分野

近年では、信頼性が重視される自動車用電子部品や医療機器向けICなどでIddq測定の活用が進んでいる。これらの分野では一度の故障が甚大なリスクを伴うため、エラー率を可能な限り下げる必要がある。さらに、スタンバイ時の消費電力を厳密に管理したいモバイル機器やIoTデバイスでも、製造段階でリーク電流を抑える重要性が高まっている。このように、消費電力と信頼性が高く求められる市場において、Iddqテストは欠陥検出と省電力の両面から効果的なアプローチといえる。

技術的課題

微細化が進むほど、トランジスタそのものが持つリーク電流は増加傾向となる。これにより正常動作の際のIddq値の絶対値が大きくなるため、欠陥による異常値との区別が難しくなりつつある。さらにマルチコア構成やオンチップ電源管理などの複雑化によって、テストパターンの選定も高度化している。加えて、単純にIddq値だけではどの部分が故障を引き起こしているかまでは特定できないため、フォールトダイアグノシス技術やテスト手法の組み合わせも必要になる。これらの点を克服するため、動的な消費電流を計測するIDDテストの拡張や、細かなパーティショニングを行った測定など新たなアプローチが模索されている。

今後の展望

次世代プロセスではFinFETやゲートオールアラウンドFETといった新構造のトランジスタが用いられ、リーク電流の制御がさらに厳しくなると予想される。こうした状況下でもIddq測定が依然として有効なデバッグ・評価手法となる可能性は高く、デジタル回路だけでなくアナログ回路や混載回路のテストにも応用が広がると考えられる。今後、設計段階からテストを考慮したDFT(Design for Test)手法と組み合わせることで、より早期に故障原因の追及や品質向上を図る動きが進むであろう。

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