HAVi|家庭内AV機器をネットワークで連携する規格

HAVi

HAViは家庭内のオーディオ機器や映像機器などをネットワーク経由で連携させるために策定されたオープン仕様である。異なるメーカーのデバイス間で操作や制御を標準化することを目指し、IEEE1394をはじめとした高速インタフェースを活用して、家庭用機器の相互接続を円滑に行う仕組みを提供している。近年はインターネット対応やストリーミング技術の進展に伴い、家電製品のネットワーク化が一般化しているが、そうした状況に先駆けて多様なAV機器の統合制御を標準化しようとする意義が認められ、業界大手を中心に一定の需要がある。

策定の背景

1990年代末頃、家庭内のデジタル機器が普及し始めた時期にHAViの考え方が浮上した。従来は各メーカー独自のプロトコルやインタフェースで機器が構成されていたため、異種機器同士を制御するには専用のリモコンや接続ケーブルなど、複雑な仕組みが必要だった。そこでSony、Philips、Panasonicなど複数の家電メーカーが協力し、シンプルかつ拡張性の高い統合制御を可能にするプラットフォームの仕様策定を進めたのがHAViである。

アーキテクチャの概要

HAViは主にソフトウェアスタックとして定義され、家電機器に組み込まれるコントローラが相互に通信する枠組みを提供する。基本的にはIEEE1394(FireWire)などのシリアルバス上で動作し、各機器が「制御可能な機能」と「制御する機能」に大きく分けられる。ホームネットワーク内には複数のデバイスが存在することを前提とし、機器が追加・削除されても柔軟に対応できるアーキテクチャを備えている。

デバイス分類と役割

HAViの仕様では、機器をFAV(Fully Abstracted Device)やBAV(Basic AV Device)、ICM(Intermediate Consumer Module)などに分類し、それぞれが果たす役割を定義している。たとえばFAVは他の機器への制御インタフェースを完全に提供できる高機能デバイスを指し、BAVは最低限の制御インタフェースしか持たない機器とされる。これによって、高性能なホームシアター用レシーバーと小型のセットトップボックスなど、多様な製品が同一の枠組みでやりとりできるようになる。

ソフトウェアモジュール

HAViのソフトウェアアーキテクチャはモジュール化が進んでおり、DCM(Device Control Module)やFCM(Functional Component Module)といった抽象化レイヤーを設けている。機器の機能はFCMがまとめて管理し、ユーザーからの操作を受け付けるUI層は別途用意される仕組みである。これにより、具体的なAV機能の実装が複数社にまたがっても、統一された方法で制御手順を実装することが可能になり、ホームネットワーク全体の互換性を高めている。

通信プロトコルとの関係

HAViは主にIEEE1394との組み合わせを想定してきたが、インターネット時代が到来すると、Ethernetや無線LANなど、さまざまな物理層が家庭内に導入されるようになった。HAViそのものは上位レイヤーのソフトウェアプラットフォームであり、下位の物理層を直接は限定しない。しかし実際にはIEEE1394を基本とした設計であったため、後発のUPnPやDLNAなど他のネットワーク標準に比べると普及面で後塵を拝する格好となった。

利点と課題

HAViの利点は、各社の機器が同一フレームワークを使用することで、ユーザー体験が大きく向上する点にある。複数のデバイスをシームレスに連携させたり、一括制御できる利便性は決して小さくない。しかし、実装の複雑さやIEEE1394の専用ハードウェアコストなどが普及の妨げとなった面も否めない。市場ではEthernetベースのプロトコルが台頭し、さらにモバイルデバイスが大量に普及したことから、HAViは一部のオーディオ・ビジュアル分野に限定されていった。

現在の位置づけ

現状ではUPnPやDLNAなど、IPネットワークを中心に据えたプロトコルのほうが広く受け入れられている。一方、FireWire対応機器や特定のAV分野では、いまなおHAViに準拠したコントローラが用いられているケースもある。歴史的に家電連携の先駆けとなった規格であり、モジュール単位での制御モデルや抽象化の考え方は後発の標準規格にも影響を与えたといえる。メーカー独自のシステムと併用しながら、特定のニーズに応える形で活用される場面が残っている。

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