CSP
CSPはChip Scale Packageの略称であり、半導体チップ本体のサイズとほぼ同等の寸法を持つパッケージング技術を指す。従来のリードフレーム型パッケージなどに比べてコンパクトかつ薄型化を実現するため、スマートフォンやウェアラブルデバイスなど小型化が要求される分野で広く採用されてきた。近年はMEMSやセンサー類などのIoT向けデバイスにも利用が拡大し、高密度実装と多機能化を両立するキーデバイスとして注目されている。
概要
半導体チップを実装基板上で直接実装する技術としては、従来からフリップチップ実装やBGA(Ball Grid Array)などが存在していた。CSPはこれらをさらに小型・薄型化し、実装面積を最小限に抑える試みとして生まれたパッケージである。パッケージ基板やモールド材、バンプなどの要素を最適に組み合わせることで、チップ外形に準拠したサイズ設計を可能にし、プリント基板の高密度化を効率的に支援する。チップとパッケージ基板の接続にははんだバンプが採用されるケースが多く、実装時にはリフローによって半田付けを行う。
やっとこいつの基板が届いてここ2、3日いじってたけど、ようやくDDR4 SDRAMの動作確認ができた。ここまでくればとりあえず一安心。3x BGA & 1x CSP & 0603(metric)チップ部品などを含む多数の部品をHome Reflowで実装したけど過去一難しかった。 pic.twitter.com/iOsmBChvud
— Yasui Tzkasa (@191Ir) December 29, 2024
特徴とメリット
CSPの最大のメリットは、チップサイズに限りなく近いパッケージを形成できるため、基板実装面積を大幅に削減できる点である。モバイル機器など搭載スペースに制約のあるアプリケーションに対して特に有用であり、小型化による設計自由度の向上や端末の高機能化に貢献している。また、従来型のパッケージでは発生しがちな電気的パラジティック成分(配線遅延やクロストークなど)を抑制し、高速信号伝送に適した特性を得やすい。さらに、パッケージ全体が小さくなることから熱抵抗も低減し、チップの放熱性能を向上させられる利点がある。
CSPチップ採用のプロジェクター式LED"バルブ"
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代表的な構造
CSPには、WLCSP(Wafer Level CSP)やFC-CSP(Flip Chip CSP)、Molded CSPなど、構造や製造方法に応じたさまざまなタイプが存在する。WLCSPはウェーハレベルでの加工と最終仕上げを行うため、工程の簡略化と低プロファイル化を実現できるが、大きめのチップサイズや球数が多い場合は歩留まりや実装信頼性への対策が必要となる。一方、FC-CSPはチップ裏面にめっきバンプを形成し、フリップチップ方式で基板に実装する構造であり、高密度バンプを配置できるため、高性能プロセッサの実装にも活用されている。Molded CSPは樹脂モールドでパッケージ全体を保護しながらバンプを外部端子として形成するタイプであり、基板に取り付ける際の取り扱い性や耐久性に優れる。
製造工程
WLCSPを例にとると、ウェハ状態のまま再配線層や保護膜を形成し、バンプを付けたのちにシンギュレーション(切り離し)を行う流れが一般的である。従来のパッケージ工程では個別にチップを取り扱うため、多数のダイを一括して処理できるWLCSP方式は工数削減につながりやすい。しかし、ウェハスケールでの加工精度や歩留まり管理が厳しく、各社の製造ノウハウが競争力の源泉となる。FC-CSPの場合は、パッケージ基板へのフリップチップ実装やアンダーフィル充填などの手順が加わり、大電流や熱応力への耐久性を高める技術が必要とされる。
実装上の注意点
CSPの実装にあたっては、はんだバンプのサイズやピッチが微細化するため、基板側のランド設計やリフロー条件、ソルダペーストの印刷精度などに注意が必要である。特に大きなパッケージサイズや高球数になると、基板の反りや温度プロファイル不均一が不良を引き起こすリスクを高める。一方でCSPが薄型かつ軽量であることから、耐落下衝撃特性や熱サイクル試験の結果にも配慮しなければならない。適切な基板スタックアップや補強部材を導入し、製造ラインでの不良解析を徹底することが実用上の課題といえる。
応用分野
スマートフォンやタブレット、ウェアラブルデバイスといったモバイル向け製品では、限られたスペースに高機能なチップを多数搭載する必要があり、CSPはほぼ標準的な選択肢となっている。また、IoT向けセンサーやMEMSデバイスにおいても、CSPの小型化特性は非常に魅力的である。さらに、高速通信モジュールやSoC(System on a Chip)のように多数のI/Oピンを持つ半導体にも適用が広がっており、次世代の5G・6G通信やエッジコンピューティング環境の普及とともに需要が一層拡大すると考えられる。
技術動向
微細加工の進展に伴い、CSPバンプのさらなる微細ピッチ化や多層再配線技術の高度化が進んでいる。ファンイン型のWLCSPだけでなく、ファンアウト型(FOWLP)によるダイサイズ以上のパッケージ拡張や多ダイ実装も注目され、多機能化や高ピン数対応への道が切り開かれつつある。また、熱設計と電気特性向上のために銅ピラーや新素材封止などが研究され、従来のCSPを超える形での3D実装や異種デバイス統合への取り組みも進められている。これらは高度情報社会の小型端末や高性能モジュールの実現を大きく後押しすると予想される。