BEI(省エネルギー性能指標)
BEI(省エネルギー性能指標)とは、建物の消費エネルギー量を客観的に評価し、省エネルギー性能を数値で示すために用いられる指標である。国内外で環境負荷の低減やエネルギー効率の向上が求められるなか、建物の設計段階から運用段階まで一貫してエネルギー消費を管理する仕組みとして注目されている。本指標は住宅やオフィスビル、商業施設など多様な建築物に適用可能であり、性能向上の度合いを定量的に把握することで、企業や個人の省エネ対策を促進する狙いがある。こうしたBEIの活用は、持続可能な社会の実現と同時に建築物の快適性や経済性も高める一助となりつつある。
指標の概要
BEIはBuilding Energy Indexの略称であり、建物の年間一次エネルギー消費量を基準値と比較することで、どの程度省エネルギー性能が向上しているかを評価する仕組みである。具体的には設計段階で設定される“設計一次エネルギー消費量”と“基準一次エネルギー消費量”を比較し、その比率を指数化することで建物の省エネ性能を数値化する。値が小さいほどエネルギー効率が高いとされ、日本の省エネ基準においてもBEIが1.0未満であれば基準以上の性能を満たすことが証明されるのである。
日本の「不動産の透明度」が19位→14位に上昇。
省エネ性の指標「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」の導入が評価された一方、共益費の内訳明細が開示されていないことが課題とのこと。https://t.co/rbC6KwWsBf— 坂根大介|イクラCEO (@ekusiaDenakas) July 26, 2018
背景と必要性
近年、気候変動への対応や化石燃料依存からの脱却が世界的な課題となるなか、建物に起因するエネルギー消費とCO2排出量は非常に大きな比率を占めている。日本でもZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が推進されており、エネルギーを大幅に抑制する設計と設備導入が求められている。このような状況でBEIは、建物が省エネ基準をどの程度満たしているかを明確化し、さらなる性能向上の目安を示す有効なツールとして機能しているのである。
経産省が発表した、建物の省エネルギー性能を評価・認証するラベリング「エネルギースター(Energy Star)」制度は商業施設や公共施設が対象みたいです。CASBEEの代わりとなる指標ということでしょうか。
— okaday (@ace_okaday) July 22, 2010
計算方法
BEIの計算は、まず設計時点で想定される建物の断熱性能や設備の効率、照明計画などをもとに設計一次エネルギー消費量を算出する。その上で、法律や条例で定められた基準値を用いて基準一次エネルギー消費量を導き、両者の比率(設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量)をBEIとして指標化する。たとえば住宅においては断熱材の厚さや窓の性能、給湯器や空調機器の効率など、細かい仕様を積み上げて消費量を見積もるため、建築や設備の専門知識が欠かせない計算手法となっているのである。
BEI(一次エネルギー消費量)の基準がZEH+(ゼッチプラス)の性能に達成していることを省エネ計算にて証明した上で第三者機関の認定を取得
これからの建築づくりは、可能ならZEH+(ゼッチプラス)の基準で設計したいものです。一次エネルギー消費量『BEI』=0.69 ≧0.75(ZEH+ 基準達成) pic.twitter.com/9bR4LDjx0n
— サトシ (@kitazakis) September 3, 2024
評価と認証制度
日本において建物のエネルギー性能を評価する制度としては、省エネ法に基づく届出や住宅性能表示制度、BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)などが挙げられる。これらの制度ではBEIを指標として採用し、数値に応じた星やランクを付与して省エネルギー性能を“見える化”する試みが進んでいる。事業者や消費者はこうした認証ラベルを参考に建物の性能を判断し、投資やリフォームの優先度を検討できるようになっているのである。
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BEI:省エネ基準に則って求めた「基準一次エネルギー消費量」に対する「設計一次エネルギー消費量」の割合を表す指標で、値が小さいほど省エネルギー性能が高い事を示す。
建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の5段階のマークは、BEIの値が小さいほど星の数が増える。— リン (@pl3_48ei) March 23, 2022
設計段階からのアプローチ
BEIを効果的に活用するためには、建物の初期設計段階から断熱性能や設備選定に配慮し、負荷を抑える工夫が求められる。たとえば外壁や屋根への高性能断熱材の適切な施工、気密性の高い開口部の採用、ヒートポンプ式給湯機器や高効率空調の導入、照明のLED化などが挙げられる。さらに省エネ設計ソフトやシミュレーションツールを併用することで、各要素の影響を定量的に把握し、BEIを目標とした最適なプランを策定することが可能となるのである。
課題と展望
一方でBEI値の低減を目指すあまり、過度に機器や設備に頼りすぎると、建物のライフサイクル全体を通じてコストやメンテナンス負担が増すリスクがある。また計算上の数値と実際の運用状況が乖離するケースもあり、入居者の生活習慣や機器の使い方次第で実際の消費エネルギーが左右される点は無視できない。それでもなお、長期的視点で地球環境を守り、ランニングコストを抑えるためにはBEIの普及と活用は不可欠であり、さらなる技術開発や運用ガイドラインの整備が期待されるところである。
関連する計測・シミュレーション
BEIの算定だけでなく、エネルギーパスやCASBEE(建築環境総合性能評価システム)など、他の評価手法やシミュレーションとの組み合わせが有効とされている。建築物全体のエネルギーバランスを多角的に検討することで、設備単体では見えづらい相乗効果やデメリットを発見しやすくなる。こうした総合的なアプローチを取り入れることで、設計者や事業者は性能向上とコスト効率を両立できる方策を見出しやすくなり、BEI活用のメリットがさらに広がると考えられるのである。