GIS
GIS(Geographic Information System)は、位置に結びつくデータを取得・統合し、空間解析と可視化で意思決定を支援する情報システムである。地図表現だけでなく、座標参照系、データモデル、データベース、配信基盤、運用ガバナンスまでを含む総合技術であり、都市計画、インフラ、防災、環境、物流、製造などで用いられる。
基本構成とデータモデル
GISは概ね「データ(Vector/Raster)」「解析」「可視化」「データ管理(DBMS)」「配信(WebGIS)」で構成される。Vectorは点・線・面とトポロジで地物を表し、属性テーブルと結合して検索・集計が可能である。Rasterは格子状の連続量(標高、土地被覆など)を扱い、セル解像度とピクセル値の定義が品質を決める。
座標参照系と測地系
座標参照系(CRS)は位置の意味を規定する基盤である。全球ではWGS84(EPSG:4326)が広く使われ、距離・面積計測には投影法が重要となる。UTM等の正角・正積・正距の特性を理解し、測地系差を跨ぐ変換では誤差伝搬とメタデータ管理が不可欠である。変換パラメータの出典と適用範囲を明示することが品質保証につながる。
データ取得と品質管理
データ取得はGNSS測位、トータルステーション、航空写真、衛星リモートセンシング、LiDAR、ドローン(UAV)、現地調査、オープンデータ等がある。位置精度、時間整合、完全性、最新性、法的制約をメタデータとして管理する。品質評価ではRMSE、基準点突合、再現可能なワークフロー記録が有効である。
ファイル形式と配信標準
代表的な形式はShapefile、GeoJSON、GPKG(GeoPackage)、KML、GeoTIFF、Cloud Optimized GeoTIFFである。相互運用にはOGC標準のWMS/WFS/WCS/WMTS、スタイル共有にはSLDやMapbox Styleが用いられる。タイル配信(XYZ/TileJSON)とキャッシュでWeb表示を高速化する。
標準化と相互運用
OGCとISO 19100シリーズはメタデータやサービスの整合を定める。EPSGコードでCRSを明示し、単位・軸順序の不一致を避ける。API化(OGC API – Features/Tiles/Styles)はRESTfulで拡張性が高い。
空間解析の代表手法
近傍解析(バッファ、最近傍)、オーバーレイ(交差・包含)、空間結合、ネットワーク解析(最短経路、到達圏)、表面解析(勾配)、内挿(IDW、Kriging)、水文解析(流域)、時空間解析(軌跡)などを用いる。入力の精度・縮尺・投影に敏感であり、結果の不確かさの定量化が前提となる。
データベースと性能設計
空間DBではPostGISが広く用いられ、R-tree系インデックスやタイル化、ベクトルタイル(MVT)により大規模データの高速閲覧を実現する。並列処理、クラスタリング、ストレージ階層化、サーバサイドのST_関数活用がスケールに効く。トリガや制約でトポロジ一貫性を維持する。
可視化とWebGIS
WebGISはブラウザ描画、インタラクティブなフィルタ、ポップアップ、ヒートマップ、等値線、3D表示を提供する。分類は連続・分位・自然分類(Jenks)を使い分け、凡例・投影表示・縮尺・帰属表示を統一する。色覚多様性とコントラスト比にも配慮する。
導入・運用とガバナンス
データライフサイクル(取得・整備・配信・保守・廃棄)を定義し、責任分担、変更管理、版管理、監査証跡を整える。個人情報は匿名化・ジオマスキング・空間集約で再識別リスクを抑える。アクセス制御、暗号化、バックアップ、災害復旧計画(RTO/RPO)を組み合わせて運用する。
関連ソフトウェアとワークフロー
主要ソフトにはQGIS、ArcGIS Pro、ArcGIS Online、GRASS GIS、GDAL/OGR、GeoServer、Cesium、MapLibre GL等がある。ETLにはFMEやPythonスクリプト(GeoPandas、PyProj、Rasterio)を用い、CIでデータ検査を自動化する。ノートブックで解析過程を記録し、再現性を確保する。組織内の標準テンプレート化と命名規則の徹底が運用効率を高める。