エンクロージャー(第2次)|農地囲い込みが進んだ時期

エンクロージャー(第2次)

エンクロージャー(第2次)とは、イングランドにおいて主に18世紀から19世紀初頭にかけて進行した農地の囲い込み運動であり、議会制定法に基づいて村落共同体の開放耕地や入会地を私的所有地として再編成した動きを指す。16世紀の羊毛生産拡大と結びつく第1次囲い込みに対し、第2次は穀物生産の増大と農業経営の近代化を目的とした点に特徴がある。この過程で大土地所有者による集約的農業が進み、余剰人口が都市へ流出して産業革命の労働力を供給し、イングランドの資本主義社会の成立を推進したと理解されている。

第1次囲い込みとの相違

16世紀前後の第1次囲い込みは、羊毛価格の高騰を背景に、牧羊のための放牧地を確保しようとする運動が中心であり、しばしば農民追放や「羊が人間を食う」という社会批判を招いた。これに対して第2次囲い込みは、人口増加と食料需要の拡大の中で、穀物や飼料作物を効率的に生産するための農地整理として推進された点に大きな相違がある。すなわち、第2次囲い込みは、羊毛業よりも穀物中心の農業革命と深く結びつき、のちの世界最初の産業革命と一体の過程として把握されることが多い。

展開時期と地域的特徴

第2次囲い込みが本格化したのは1700年頃から1830年頃までであり、とりわけ18世紀後半の「議会囲い込み」が代表的である。中部イングランドの湿潤な草地や肥沃な穀倉地帯で著しく進行し、村落の開放耕地が測量図にもとづいて再分配され、垣・生け垣・溝などで明確に区画された私有地へと再編成された。ロンドンやシティ市場への供給地域に近いほど市場指向的農業が発達し、囲い込みの利益を享受しやすかったと考えられる。

原因―人口増加と市場経済の発展

  • 17世紀末から18世紀にかけての人口増加により、穀物を中心とする食料需要が拡大した。
  • ロンドンなど大都市の成長と交通網の整備により、農産物市場が広域化し、商業的農業が採算に乗りやすくなった。
  • 穀物価格の長期的上昇により、土地を集約経営する地主やテナント農民にとって囲い込みが有利になった。
  • 国家財政の拡大とイングランド銀行や国債制度の発達により、地主層が投資先として土地改良や新農法導入に関心を高めた。

議会囲い込みの仕組み

第2次囲い込みの多くは、個別の村ごとに議会特別法(エンクロージャー法)を制定して進められた。地主や有力なテナントが請願を行い、議会がこれを承認すると、測量士とコミッショナーが任命され、村全体の土地配分計画が作成された。そこで各戸の旧来の権利に応じた地所が割り当てられ、開放耕地と入会地は消滅した。実務は複雑で費用も高く、審理・測量・境界画定にいたるまで多くの手続きが必要であったため、費用を負担できる大地主ほど有利に働いたとされる。

  1. 地主とテナントによる囲い込み請願
  2. 議会での審議と特別法の制定
  3. 測量・地図作成と権利確認
  4. 新たな地割の決定と境界の標示
  5. 共同利用地や入会権の廃止・補償

農業革命と経済的影響

第2次囲い込みは、輪作の導入や飼料作物の栽培拡大など農業革命と不可分である。ノーフォーク式輪作に代表される新農法は、連作障害を避けつつ家畜頭数を増やし、肥料供給を改善することで穀物収量を高めた。囲い込みによって地片化した耕地が統合され、個別経営単位の裁量で新農法を導入しやすくなった結果、生産性は向上し、イングランドはヨーロッパ有数の穀物輸出国となった。この農業部門の余剰は、工業部門の発展と二重革命、さらには欧米近代社会の形成を支える重要な基盤となった。

農民社会への影響と都市への人口流出

一方で、第2次囲い込みは農民社会に大きな変動をもたらした。一定の地所や権利を持つ自作農や富裕テナント農民は、新たに割り当てられた土地を担保に経営を拡大し得たが、小規模な保有権しか持たない貧農や、入会権だけに生計を依存していた層は、補償が不十分なまま生計手段を失うことが多かった。彼らの一部は日雇い農業労働者として大農場に雇われたが、多くは農村を離れ、工業都市へ移住して生活革命とも呼ばれる都市的生活様式の変化を経験した。この人口移動は、工場労働者階級の形成と世界最初の産業革命の進展に直結したと理解される。

歴史学における評価

歴史学において第2次囲い込みは、イングランドの農業革命・産業革命・金融革命と結びついた長期的な構造変動として位置づけられてきた。ある立場は、囲い込みを土地所有の近代化と生産性向上の契機として肯定的に評価し、他の立場は、共同体的慣行の破壊と貧民層の流出を強調して批判的に描き出す。いずれにせよ、議会立法を通じた囲い込みは、国家権力・地主支配・市場原理が結びついた制度変革であり、イングランド近代史を理解するうえで不可欠の鍵概念となっている。

関連する制度・国際関係

第2次囲い込みの背後には、国家財政や国際経済の変化も存在した。イングランド政府は戦費調達のために国債を発行し、その管理機関としてイングランド銀行を創設した。こうした金融制度の整備は、地主層に対する安定した利子収入を保証し、土地改良や農業投資への関心を高めた。また、対外的には葡萄酒と毛織物の交易関係を規定したメシュエン条約などが、イングランドの輸出産業や農業構造に影響を与えたとされ、第2次囲い込みは国内要因だけでなく国際関係とも連動した現象として捉えられている。

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