貸付金
貸付金とは、資金を一定期間相手方に貸し付け、将来の返済を受けることを目的として計上される金銭債権である。企業会計では流動資産または固定資産に区分され、金融機関の貸出に限らず、事業会社が取引先や関係会社、従業員などへ資金を供与するケースも含む。回収可能性が資産性の核心であり、条件設定と管理体制が不十分な場合は損失化しやすい点に特徴がある。
概念と対象範囲
貸付は、返済義務を伴う点で寄付や出資と異なり、契約に基づく返済スケジュールと利息の取り扱いが前提となる。実務上は、返済期限が1年以内のものを流動、1年超を固定として管理することが多い。相手先の信用状況や資金使途に応じて、融資の可否や上限、期限前回収条項などを設計し、資産としての合理性を担保する必要がある。
契約で定める主要項目
貸付契約では、回収条件を明確化して紛争や貸倒を抑制する。とくに金利条件と期限の整合が重要である。
- 元本、実行日、最終返済期限、返済方法(分割・一括)
- 利息の算定方法、支払日、遅延損害金
- 資金使途、期限前返済の可否、期限の利益喪失条項
- 担保・保証、表明保証、財務制限条項(コベナンツ)
担保・保証と回収可能性
回収可能性を高める手段として、担保設定や保証人の付与が用いられる。担保の価値は市場環境で変動し、処分時に換金できるかが実効性を左右する。無担保の場合は、相手方の収益力、資金繰り、取引関係の継続性など、実態に即した信用判断が不可欠である。貸付の実行前後で、相手方の財務悪化が確認されたときは条件変更や回収強化を検討し、債権管理を更新していく運用が求められる。
金利設計と資金管理
貸付側は、調達コストとリスクを踏まえて利率を設計する。低すぎる利率は収益性を損ね、高すぎる利率は返済負担を重くして延滞を誘発しやすい。資金繰りの観点では、返済金が将来のキャッシュフロー計画に組み込まれるため、返済の集中や回収遅延は流動性リスクとなる。したがって、貸付残高の上限設定、回収見込みのモニタリング、資金繰り表への反映を一体で運用することが重要である。
信用リスク管理の実務
貸付は典型的な信用リスクを伴う。形式的な契約書だけでは不足し、実態の把握と継続管理が要点となる。
- 与信方針の策定(対象先、目的、上限、権限)
- 相手方の審査(財務、事業、資金繰り、返済原資)
- 契約条件の確定(期限、利率、担保、条項)
- 期中管理(入金確認、財務悪化の兆候把握、条件見直し)
- 延滞時対応(督促、期限利益喪失、回収・法的措置)
関係会社・役員等への貸付
関係会社や役員、従業員への貸付は、経済合理性の説明責任が重くなりやすい。市場水準とかけ離れた条件は、利益供与と受け取られるおそれがあり、社内規程、稟議、取締役会決議などの統制が必要となる。資金使途の確認と返済状況の開示を含め、第三者目線での妥当性を確保する運用が望ましい。
会計処理と開示の要点
貸付金は債権として計上され、期中の利息は収益認識の対象となる。回収懸念が高まった場合は、見積りに基づき貸倒引当金を設定し、資産の実在性を保つ。貸付金残高はバランスシート上で資産を構成するため、回収不能の発生は損益だけでなく財務体質にも影響する。重要性が高い貸付や関連当事者取引は、注記等で条件や残高、回収状況の説明が求められ、透明性の確保が管理実務と表裏一体となる。