竣工検査|建物の品質と安全性を確認し、使用開始に必要なプロセス

竣工検査

竣工検査とは、設計図書・仕様書・関係法令に対して完成した建築物や土木構造物の品質・性能・安全性を最終確認する行為である。引渡し直前に実施し、出来形・機能・外観・書類整備の全体を俯瞰的に点検する。公共工事では監督職員の検査や出来形管理基準への適合確認、民間工事では施主・設計者・施工者の三者確認が中核となる。検査結果は指摘事項(パンチリスト)として整理し、是正後の再確認を経て合格判定とするのが一般的である。

目的と位置づけ

竣工検査の第一の目的は、供用開始後の安全・耐久・機能不全リスクを未然に防止することである。第二に、契約図書への適合性を確証し、発注者の資産価値を担保する。第三に、維持管理引継ぎの起点として設備台帳・竣工図・試験成績書を確定する。結果として、引渡し・保修開始・瑕疵担保責任の起算に直結する工程上の重要マイルストーンである。

適用範囲と法的根拠

竣工検査は建築基準法の完了検査や各種届出、消防法に基づく査察、道路・河川等の所管機関検査などと連動する。公共工事標準仕様書や工事成績評定の観点でも重要であり、電気・管・機械設備等の各専門工事においては個別の法定試験(絶縁・耐圧・気密・水圧・作動)と一体で実施される。

検査のプロセス

  1. 事前準備:検査計画、基準書、チェックリスト、測定器校正証明の確認。
  2. 外観・出来形の一次確認:仕上げ、納まり、寸法、勾配、通りの是正要否を把握。
  3. 機能・性能試験:空調試運転、風量・流量、騒音、照度、避難設備作動など。
  4. 書類確認:竣工図、取扱説明書、試験成績、材料証明、保証書、写真台帳。
  5. 指摘・是正:パンチリスト化、期限設定、是正完了報告と再検。
  6. 最終合意:鍵・資産台帳・引渡書の授受、保守教育の実施。

検査項目の体系

  • 意匠・仕上げ:キズ、汚れ、色差、反り、目地通り、建具作動。
  • 構造・出来形:軸組・配筋の検査記録、かぶり、寸法、アンカーの位置と締付。
  • 電気設備:配線系統、盤内結線、絶縁抵抗、接地、非常用電源、避雷。
  • 機械設備:ポンプ回転、圧力、漏れ、流量バランス、保温・防露。
  • 法適合:用途変更の要否、避難経路、バリアフリー、騒音・振動規制。
  • 書類・引継:竣工図(As-built)、O&M、部材リスト、保守スケジュール。

チェックリストと記録化

竣工検査では、工種別チェックリストと写真台帳を対応付け、指摘箇所に番号を付して位置図・是正内容・確認日を記録する。是正後は同一番号で追跡し、残工事・手直し・保留事項を区分してクローズ管理する。電子承認やQR連携により、現場とバックオフィスの整合性を高める手法が有効である。

測定器・ツール

  • 寸法・出来形:レーザーレベル、スケール、角度計、クラックスケール。
  • 締結:トルクレンチ(アンカー、ボルトの規定トルク確認)。
  • 電気:絶縁抵抗計、接地抵抗計、ループインピーダンステスタ。
  • 機械・配管:圧力計、流量計、煙試験器、騒音計、サーモグラフィ。
  • 空調:風量計、温湿度計、バランサ。

不適合への対応

竣工検査での不適合は、是正・代替・減額のいずれかで処置する。是正は設計者承認のもとで方法を書面化し、再検証により合格を得る。代替は性能同等以上を原則とし、合意形成の記録を残す。減額は最終手段であり、品質リスクを内包しない範囲に限定する。

工程・コスト・リスク管理

竣工検査の遅延は引渡し遅延と追加費用を誘発するため、中間検査・先行試運転・部分引渡し等でピーク負荷を平準化する。クリティカルパス上の是正工事は優先順位を高く設定し、並行作業時は養生と安全動線を確保することが肝要である。

ICT・BIMの活用

BIMモデルと出来形点群(スキャナ)を突合し、干渉・寸法差を可視化する。モバイル端末でパンチリストをクラウド同期し、写真・動画・音声メモを紐付けると確認性が向上する。電子黒板やGPSタイムスタンプの活用は、監査対応とトレーサビリティ強化に資する。

公共・民間の違い

公共工事の竣工検査は出来形規格値・出来形管理図表・工事成績評定との連関が強く、第三者の検査権限が明確である。民間では設計監理者と施主の合意形成が中心で、性能保証・アフター体制の評価比重が高い。いずれも引渡し後の保修対応を円滑にするため、引継教育と緊急連絡系統の確認が不可欠である。

よくある指摘例

  • 仕上げ:巾木の隙、シーリング欠損、建具のラッチ不良、ガラス傷。
  • 電気:盤内結線の結束不足、表示ずれ、器具番号未貼付、照度不足。
  • 機械:ドレン勾配不足、バルブ向き誤り、保温切れ、振動・騒音過大。
  • 法適合:手摺高さ不足、避難誘導表示の欠落、バリアフリー経路の不整合。
  • 書類:竣工図未反映、シリアル未記載、保証期間の相違、試験成績の欠落。

立会い体制の要点

発注者・設計監理・施工者に加え、電気・機械・防災・昇降機・外構など専門業者の責任者が同席し、権限委譲と即時判断を可能にする。鍵管理・立入制限・是正作業の段取りを当日に確定し、工期末の混乱を回避するのが望ましい。