共和党
共和党は、19世紀半ばのアメリカ合衆国で誕生した政党であり、奴隷制拡大に反対する諸勢力が結集して成立した政党である。とりわけ北部の反奴隷制勢力や、自由労働を重視する市民・農民・実業家を基盤とし、やがてエイブラハム=リンカーンを大統領に擁して南北戦争を主導したことで、アメリカ政治史に決定的な影響を与えた政党である。
成立の背景
共和党の成立は、アメリカにおけるアメリカの南北対立の激化と密接に関係する。19世紀前半、アメリカでは南部の綿花プランテーション経済を支える奴隷制と、工業化の進む北部の自由労働社会との矛盾が拡大した。奴隷制の拡大を一時的に調整したミズーリ協定が崩れ、逃亡奴隷を取り締まる逃亡奴隷法や、新領土での奴隷制の可否を住民投票に委ねるカンザスネブラスカ法が制定されると、北部では激しい反発が生じた。このとき、旧ホイッグ党の反奴隷制派や自由土地党などが合同し、新たな反奴隷制政党として共和党が結成されたのである。
自由州と北部勢力の結集
共和党は、奴隷制を認めない自由州の有権者、とくに北部の中産階級や農民を主な支持基盤とした。彼らは南部の奴隷州が新領土へ奴隷制を拡大することに反対し、「自由土地・自由労働・自由人」という理念を掲げた。これは、奴隷労働ではなく自由な賃金労働によって社会と経済が発展すべきだとする思想であり、奴隷制の拡大を阻止することが北部社会の利益にかなうという認識に基づいていた。
南部との対立と南北戦争
共和党は、南部の州権主義や奴隷制擁護勢力と対立しながら政治勢力を拡大した。1860年の大統領選挙では、南部の反発を招きつつも北部諸州の支持を集め、リンカーンが共和党出身の大統領として当選した。これに反発した南部諸州は連邦から離脱し、南北戦争が勃発した。戦争の過程で共和党政権は奴隷解放宣言を発し、奴隷制廃止と合衆国の統一維持を掲げて戦争を遂行した。
奴隷制廃止と黒人解放運動との関係
南北戦争期の共和党は、奴隷制廃止を掲げる急進派と、主として合衆国の統一を重視する穏健派を内に抱えつつも、結果として奴隷制廃止を実現した。地下組織として逃亡奴隷を支援した地下鉄道運動や、その象徴的人物であるハリエット=タブマンの活動も、共和党の反奴隷制世論の高まりと連動して理解される。また、奴隷を追跡する法制度であった逃亡奴隷法への反発も、同党の支持を広げる要因となった。
再建期と19世紀後半の展開
南北戦争後、共和党は連邦政府を主導し、南部の再建と黒人の市民権付与を進めた。再建期には黒人の参政権や公民権を保障する憲法修正が行われたが、南部白人の抵抗やテロ、差別立法によりその成果は部分的に後退した。それでも共和党は、合衆国全体の統一と国民国家の形成を進める推進力として働き、鉄道建設や開拓促進などを通じて西部開発と国土統合を進めた。
保護貿易と産業政策
19世紀後半の共和党政権は、国内産業を育成するための保護関税政策を重視した。工業化の進む北部の産業資本家や労働者は、外国製品に高い関税をかける政策を支持し、強力な支持基盤となった。こうして共和党は、自由労働を掲げつつも国家による産業保護を積極的に行う政党として、アメリカの工業国家化を推進したのである。
思想的特徴と歴史的意義
共和党の思想的特徴は、奴隷制拡大への反対と自由労働の尊重、連邦統一の擁護にあった。南北戦争を通じて合衆国をひとつの国民国家として再編し、奴隷制廃止を法制化した点で、同党はアメリカ近代史に決定的な役割を果たした。また、北部の資本主義的発展を支える政治勢力として、工業化と西部開拓を推進し、19世紀末までアメリカ政治を主導した政党である。