軸受(ベアリング・bearing)
軸受は、回転運動や往復運動する軸を支え、正確になめらかに運動させ続ける働きを持たせる機械要素である。機械の中で部品が運動する中で、運動のムラ、騒音、振動、焼付き、軸の破損などを防ぐ役割を持つ。回転部分に用いられるため、産業の米と呼ばれる。軸受には、玉やころが転がり接触をする転がり軸受と、ジャーナルが潤滑材を介して滑り接触をする滑り軸受に分類される。また、荷重から見て、軸の半径方向の荷重を支えるラジアル軸受と軸方向の荷重を支えるスラスト軸受に分類される。
歴史
紀元前のエジプト、ピラミッドの建設に、ころが利用されていたことが知られており、また巨大な石像を古代の人々が運んでいる様子が、紀元前8世紀に描かれた古代メソポタミヤのレリーフ(浮き彫り)に残されている。これが軸受の起源だといえる。日本では、ころと呼ばれ、現代でも大きなものを運ぶときに利用されることもある。なお、現在使われている軸受に近い基本構造は、15世紀にレオナルド・ダ・ヴィンチにより考案されたが、実用化されるまでには至らなかった。産業革命から自動車の発展とともに軸受が利用されるようになった。
軸受の役割
- 機械の中の摩擦を減らすことで、機械が働く効率を高める
- 機械の摩耗を減らすことで、機械の寿命を長くする
- 機械の焼付きを防ぐことで、機械の故障を減らす
受ける荷重による分類
軸受の分類として、受ける荷重の方向を基準にラジアル軸受(接触角が0°以上°45以上)とスラスト軸受(接触角が45°を超え90°以下)に区分される。回転体の円周方向にはたらく力(ラジカル荷重)を受け止める軸受をラジカル軸受、回転体の軸方向に働く力(スラスト荷重またはアキシアル荷重ともいう)でスラスト軸受という。
ころがり軸受
ころがり軸受は深溝玉軸受に代表される軸受で玉やころが入っている軸受である。軌道輪、転動体、保持器から構成される。自動車やOA機器、工作機などあらゆる機会の回転部分に使われている。摩擦が小さく潤滑・メンテナンスが容易であるが、高速で回転するため、騒音や振動の原因となる。
すべり軸受
すべり軸受は、すべり面で軸を支持し、円滑剤によりすべり面と軸との摩擦を減らすことで、なめらかな回転を行う軸受である。面で支えるため、寿命が長く、騒音や振動の発生が少ないのが特徴である。また、ころがり軸受のように部品点数を必要とせず、省スペース、低コストとなる。すべり軸受の中で軸の半径方向の荷重に強いものをラジカル軸受といい、軸方向の荷重を支えるものをスラストつば軸受という。また潤滑油を使わず、焼結金属や合成樹脂など多孔質の材料に潤滑油を含有させることで、潤滑油を必要としない、含有軸受もある。
ころがり軸受とすべり軸受
ころがり軸受とすべり軸受との大きな違いは、下記の通りである。
荷重 | 回転速度 | 始動摩擦 | 振動摩擦 | 潤滑材 | メンテナンス性 | 構造 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ころがり軸受 | × | 拘束域の速度限界は、 許容回転速度によって与えられる。 |
小 | 大 | グリース潤滑 | 〇 | 複雑。量産化されている |
すべり軸受 | 〇 | 高速に適し、 速度限界は上昇温度に規定 |
大 | 小 | 油潤滑 | △ | 構造はシンプルだが、加工にコストがかかる。 サイズの自由度は高い。 |
ピポット軸受
ピボット軸受は、揺動運動に対応した軸受で、先端にR(r1)をつけた円すいの軸をより大きいR(R1)でそれを受ける構造となっている。小さい荷重のものに向いており、時計や計器に利用されている。
シール
シールとは、軸と軸受の間から潤滑油がはみ出ないようにするために、外部からごみや水などの異物が入らないようにするための部品である。オイルシールやラビリンスパッキンなどがある。
オイルシール
オイルシールは、断面形状をもつ合成ゴムで作られたリングで内側が軸と接触する構造である。
ラビリンスパッキン
ラビリンスパッキンとは、曲折した狭いすきまを利用してシールを働きをさせる構造となっている。加工が難しいものであるが、高速回転軸に適している。
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