軸およびハウジングのすみの丸みの半径ならびにラジアル軸受に対する軸およびハウジングの肩の高さ

軸およびハウジングのすみの丸みの半径ならびにラジアル軸受に対する軸およびハウジングの肩の高さ

本項目は、ラジアル軸受の座りを確実にし寿命低下を避けるために不可欠な「すみの丸み(フィレット)半径」と「肩(段差)高さ」の決め方を解説する。特に、軸側・ハウジング側の角部Rは軸受輪の面取り(シャンファ)寸法以下に収め、肩高さは面取りを確実に逃がしつつ側面全体で支持できるように設計することが要点である。ここでは定義、設計原則、製図指示、検査の勘所までを一通り示す。

用語と目的

すみの丸み半径(フィレットR)は、軸段差やハウジング段差のコーナーに付けるRである。軸受側には内輪・外輪の端面に面取り(r1、r2などで表される最小シャンファ寸法)があり、コーナーRがこれを超えると軸受輪が肩に干渉し、座面が浮いて偏荷重・発熱・早期剥離の原因となる。肩の高さ(h)は、段差の高さであり、輪の側面を十分に支持しつつ面取り部やシール部品に当たらないよう確保する。目的は「確実な全面接触」「応力集中の回避」「組立安定性の確保」である。

設計の基本原則

  • コーナーRの原則:設計するR(r)は軸受カタログに示される最小面取り寸法rs以下、すなわち r ≤ rs とする。実務上は余裕を持たせ r ≈ 0.7〜0.9×rs とし、工具摩耗や加工ばらつきに備える。
  • 肩高さの原則:肩高さhは、面取り部を確実に逃がしつつ、輪の側面全体で支持できる値とする。目安として h ≥ rs+c とし、cは製造余裕(小形で0.1〜0.2 mm、中大形で0.3〜0.5 mm程度)を与える。
  • 直角度・振れ:座面の直角度、段差肩の振れは軸受の許容値以下に管理し、片当たりと局部応力を避ける。座面粗さは一般にRa 0.4〜1.6 μmが目安である。
  • シール・保持器との干渉回避:接触シール付やシールド付は肩が近すぎると干渉や発熱を招くため、図面で逃げ面や面取りを指定する。

肩高さの決め方(軸側ha・ハウジング側hb)

  1. 採用軸受のデータを確認する。幅B、端面面取りr1・r2、シールの張り出し寸法、推奨座面条件を把握する。
  2. コーナーRを決める。工具のノーズRや研削可能性を踏まえ、r ≤ rsかつ量産での安定加工が可能な値を選ぶ。必要に応じて「逃げ溝(段差逃げ)」を併用する。
  3. 肩高さhを設定する。基本は h ≥ rs+c。固定側(荷重支持側)は側面全体で確実に当て、浮動側は熱伸びや組立容易性に配慮して余裕を持たせる。
  4. 付属部品を考慮する。ロックナット・座金・止め輪・オイルシール・スペーサなどの厚みや逃げを考慮し、干渉を避ける。

計算の目安

記号を r:設計コーナーR、rs:軸受最小面取り、h:肩高さ、c:製造余裕とすると、第一条件は r ≤ rs、第二条件は h ≥ rs+c(= r+c でも可)である。cは加工能力と寸法公差によって設定し、複合公差(直角度・平面度・振れ)も踏まえて安全側にとる。

製図・公差の指示方法

図面では、コーナーRに「R0.4以下」のような上限制(Max.)を与えると量産で扱いやすい。肩高さは基準寸法で与え、直角度・振れは幾何公差で管理する。座面の仕上げは粗さ記号(例:Ra 0.8)を明記する。面取りで逃がす場合は「C0.5」等の45°面取りで指示し、シールや保持器の張り出しがある場合は逃げ面の寸法・角度も指示する。嵌合は荷重条件に応じて軸側・ハウジング側のはめあい記号(例:軸k6〜m6、ハウジングH7など)を整合させる。

典型値の目安と選定のコツ

  • 小形の深溝玉軸受(02、03系列)では rsが0.3〜0.6 mm程度の例が多く、コーナーRは0.2〜0.5 mmが扱いやすい。
  • 円筒ころ・自動調心形・ラジアル荷重が大きい用途では rsが1〜3 mm級となることがあり、逃げ溝や大きめの肩高さ設計が有効である。
  • シール付は肩近傍のクリアランスを確保し、グリース逃げや組立工具の当たりを想定してC面またはR面で逃がす。
  • 薄肉・薄幅の軸受は側面支持長さが不足しがちで、スペーサ併用で面圧を分散させるとよい。

よくある不具合と対策

  • 干渉による浮き上がり:r > rsで内輪(外輪)が肩に当たり、座面が浮く。
    対策:rを下げる、逃げ溝を追加、肩角に面取りを設ける。
  • 肩高さ不足:側面支持が不完全でリングが傾く。
    対策:hを増やす、スペーサを介して支持面を延ばす、直角度公差を厳しくする。
  • 肩高さ過大:シールや保持器と干渉。
    対策:肩面にC面を設ける、シール張出寸法を再確認してhを適正化する。

寸法例

rsmin rasmax h
最小
h
最小
特別な場合
0.1 0.1 0.4 0.4
0.15 0.15 0.6 0.6
0.2 0.2 0.8 0.8
0.3 0.3 1.25 1
0.6 0.6 2.25 2
1 1 2.75 2.5
1.1 1 3.5 3.25
1.5 1.5 4.25 4
2 2 5 4.5
2.1 2 6 5.5
2.5 2 6 5.5
3 2.5 7 6.5
4 3 9 8
5 4 11 10
6 5 14 12
7.5 6 18 16
9.5 8 22 20
rsmin rasmax h
最小
h
最小
特別な場合