超音波加工|高速振動で難削材も正確加工を可能

超音波加工

超音波加工とは、工具に超音波帯域(一般に20kHz以上)の高周波振動を与え、その振動エネルギーを利用して材料を微細に除去・成形する加工技術である。振動によって工具と砥粒、ワーク(被加工物)表面の間に強い衝突・摩擦が生じ、脆性材料や硬質材料でも精密な形状を得やすい特徴をもつ。超音波を利用した加工方法で、加工機と部品の間に細かい砥粒を混ぜたスラリーと呼ばれる流体をつけ、工具に一定の力を加えて、約20000Hzの超音波振動を与えてその振動により加工する。超硬合金、ガラスセラミックスなど硬度が高く脆い材料に対して、穴あけ、切断、形彫りなど、通常のドリルでは難しい加工を行うことができる。

背景

従来の切削や研削では、ダイヤモンド砥石など硬度の高い工具を用いながらも、ワークに大きな力が加わるため表面欠陥や熱的ダメージが生じやすかった。一方、超音波加工は高周波振動を利用して脆性材料を少しずつ破砕するため、塑性変形や熱応力の発生が抑えられる。加工時の負荷が軽減されることから、微細形状の加工にも適し、部品の高精度化と高信頼性を要求する先端産業で重要な地位を確立した。

原理

工具やホーン(振動増幅器)に超音波振動子(piezoelectric transducerなど)を取り付け、高周波電気信号を機械的振動へ変換する。砥粒が混在するスラリー(研磨液)と併用する場合、工具先端とワーク表面との間で砥粒が衝突し、材料を微小破砕する。これにより材料除去が繰り返され、必要な形状・深さへと加工が進む。超音波加工では工具自体は大きな送り力を必要とせず、振動エネルギーが局所的に作用する点が特徴的である。

装置構成

一般的には下記のような要素で構成される。

  • 高周波発振器:電力を超音波帯域の振動エネルギーへ変換
  • 振動子とホーン:振動幅を増幅し、工具先端へ効率よく伝達
  • 工具:形状や砥粒分布に応じて多様な材質・形状が選択される
  • ワーク固定台:振動によるズレを防止し、確実な位置決めを行う
  • 研磨液システム:砥粒を含む液体を供給し、摩擦・冷却・除去を促進

メリットとデメリット

超音波加工のメリットには、低い加工力で脆性材にも対応できること、加工精度が高いこと、熱的影響が少ないことなどが挙げられる。一方、加工速度が比較的遅い点や、振動子やホーンの耐久性維持が課題となる点はデメリットとされる。加工形状が複雑になるほど治具や工具設計が難しくなり、装置コストが上昇しやすい傾向もある。

代表的な応用例

航空機エンジンに使用される耐熱合金やセラミックス、電子部品向けのシリコンウェハの微細加工、光学機器に使われるガラスやサファイア基板など、硬く脆い素材の加工に活用される。また医療機器分野では、セラミック製インプラントの加工に超音波加工を導入する例も増えてきた。従来工法では割れや加工ひずみが問題視される材料に対して、安定的な仕上がりを実現できる点が評価されている。

研究動向

最近では他の加工技術と組み合わせる複合超音波加工も注目を集めている。例えば放電加工やレーザー加工と併用し、材料除去率や仕上げ精度を高める試みが進む。さらに自動化やIoT化の要請により、振動パラメータや工具状態をリアルタイムでモニタリングし、最適制御する技術も研究されている。こうした複合化と高度制御によって、より複雑な形状や大面積加工にも対応可能となる見込みがある。

業界標準と安全面

超音波加工設備は高周波電源を扱うため、電磁波やノイズが発生するリスクがある。対策としてシールドやアースを確保し、作業者が高周波漏れに晒されないよう配慮が求められる。また、振動子や工具の定期的な点検を行い、亀裂や摩耗を早期発見することも重要である。各国で機械安全基準や電気安全基準が定められており、メーカーや使用者はこれらの規格を遵守しながら装置導入・運用を進めている。

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