賦課方式
賦課方式(ふかほうしき)とは、社会保障制度や税制度において、現在の労働者や納税者から集めた資金を、同時期の受給者や必要な公共サービスのために充てる方式を指す。主に年金制度や医療保険制度で採用されており、現役世代が納付した保険料や税金が、その時点での受給者に直接支払われる仕組みである。この方式は、資金をその都度徴収し、そのまま使うため、年金や医療費を将来のために積み立てる「積立方式」とは異なる。
賦課方式の仕組み
賦課方式では、現役世代から徴収した保険料や税金が、即座にその時点での年金受給者や医療サービスの提供者に支払われる。このため、資金は将来的な積み立てではなく、その年やその月に必要な支出に充当される。例えば、年金制度の場合、現在働いている人が支払った保険料が、高齢者の年金として支払われる。つまり、現役世代が高齢者を支える「世代間扶養」の考え方に基づく仕組みである。
賦課方式のメリット
賦課方式のメリットは、制度運営の柔軟性と、制度が開始された当初からすぐに年金や医療費を支払える点にある。また、インフレリスクに対しても比較的強いという利点がある。積み立て方式では、将来のインフレによって積み立てた資金の価値が目減りする可能性があるが、賦課方式ではその時点の現役世代が支払うため、インフレの影響を直接受けにくい。
賦課方式のデメリット
賦課方式にはいくつかのデメリットも存在する。まず、少子高齢化が進むと、現役世代の負担が増加するリスクがある。特に高齢者が増加し、現役世代が減少する国では、賦課方式で年金や医療費をまかなうことが難しくなり、財政的な持続性が懸念される。また、将来の給付額が現役世代の収入や納税額に依存するため、経済状況が悪化した場合には給付額が減少するリスクもある。
賦課方式と積立方式の比較
賦課方式と積立方式の違いは、資金の運用方法にある。賦課方式では、現役世代が支払った保険料や税金がその時点で支払われるが、積立方式では、個人が支払った保険料を将来の年金や医療費のために積み立て、運用する。このため、積立方式は個人の老後に向けた資金の積み増しを目的としており、長期的な運用リターンを得ることができる可能性がある。一方、賦課方式は、将来に備えた運用を行わないため、財源が不足するリスクが高い。
賦課方式の将来への課題
賦課方式を維持する上で、少子高齢化や人口減少が大きな課題となる。高齢者の割合が増え、現役世代が減少することで、現役世代1人当たりの負担が増加し、年金制度や医療保険制度の財政が圧迫される。また、経済成長が鈍化した場合、賦課方式での資金調達が困難になる可能性がある。このため、将来の制度持続性を確保するために、制度改革や負担と給付の見直しが必要とされている。