現物分割
現物分割(げんぶつぶんかつ)は、遺産相続において、被相続人(亡くなった人)の財産をそのままの形で相続人に分割する方法である。現金や不動産、株式などの具体的な資産を個別に分割し、それぞれの相続人が所有権を得る形式で行われる。現物分割は、遺産をそのままの形で相続できるため、資産の価値を維持しやすい反面、公平な分割が難しくなることがある。
現物分割の特徴
現物分割では、遺産を売却したり換価したりすることなく、現物のまま分割するため、資産そのものの価値が保たれる利点がある。例えば、不動産を現物分割する場合、特定の相続人がその不動産を取得し、他の相続人は別の資産を取得することで分割が行われる。しかし、現物分割では、各相続人が取得する財産の価値を均等にすることが難しい場合があり、調整が必要となる。
現物分割のメリットとデメリット
現物分割のメリットは、資産の価値を維持できる点にある。特に、不動産や株式など、換価することで価値が下がる可能性がある資産においては、現物分割が有効である。また、相続人が特定の資産を希望する場合、その資産をそのまま引き継ぐことができる。一方、デメリットとしては、公平な分割が難しいことや、相続人同士での協議が必要となることが挙げられる。特に、不動産などの高額な資産を分割する際には、他の資産とのバランスを取るために補償が必要になることがある。
現物分割の実例
例えば、被相続人が複数の不動産や株式を保有していた場合、相続人Aには特定の不動産を、相続人Bには株式を、相続人Cには別の不動産をそれぞれ分割して相続することが現物分割の一例である。この際、各相続人が取得する資産の価値が大きく異なる場合には、現金や他の資産を使って価値の調整を行うことが求められる。
現物分割が難しい場合
現物分割が難しい場合として、資産が不動産のみであり、分割することで資産の価値が著しく低下する場合がある。例えば、土地を複数の相続人で物理的に分割すると、それぞれの土地が利用しにくくなり、結果的に価値が下がることがある。このような場合には、換価分割(資産を売却して現金を分配する方法)や代償分割(相続人の一部が現物を取得し、他の相続人には現金などで補償する方法)を検討することもある。
現物分割の進め方
現物分割を進めるためには、相続人全員が協議して、遺産分割協議書を作成することが重要である。協議の際には、公平な分割を目指しつつ、各相続人の希望や意向を尊重することが求められる。また、資産の価値を正確に把握するために、専門家の助言を受けることも有効である。