特別方式遺言|緊急時や特殊な状況下で簡易に作成される遺言

特別方式遺言

特別方式遺言とは、通常の遺言の方式(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)とは異なり、緊急事態や特殊な状況下で行われる特別な形式の遺言を指す。これは、被相続人が死期が近い状況や、事故・災害などで通常の遺言作成が困難な場合に限り認められる。特別方式遺言は、通常の方式に比べて簡便な手続きで作成できるが、その後、家庭裁判所の確認が必要となるため、一定の条件を満たさなければ効力が認められない。

特別方式遺言の種類

特別方式遺言には、いくつかの種類があり、それぞれの状況に応じて適用される。主なものは以下の通りである。

  • 危急時遺言:死期が迫っている状況で、医師などの立ち会いの下で口頭で行われる遺言。
  • 隔絶地遺言:船舶内や交通が遮断された地域などで、通常の方法で遺言を作成できない場合に行われる遺言。
  • 伝染病隔離者の遺言:伝染病にかかり隔離された状態で、他者と接触が制限されている場合に行われる遺言。

危急時遺言

危急時遺言は、被相続人が重病や死期が近い状況であり、通常の遺言作成が困難な場合に認められる。具体的には、証人3人以上の立会いのもと、口頭で遺言の内容を伝え、それを証人が筆記して署名・押印する。作成後、20日以内に家庭裁判所に確認を申請し、裁判所が内容を確認し認めた場合に初めて法的効力を持つ。

隔絶地遺言

隔絶地遺言は、船舶の中や山岳地帯など、外部との交通が遮断された場所で作成される遺言である。証人2人以上の立ち会いが必要であり、証人が遺言内容を筆記し、署名・押印する。危急時遺言と同様に、家庭裁判所の確認を得る必要がある。この方式は、災害時や事故に遭遇した際に利用されることが多い。

伝染病隔離者の遺言

伝染病隔離者の遺言は、伝染病にかかり他者との接触が禁止されている状況で作成される遺言である。この場合、医師1名と証人1名の立会いのもとで遺言が作成され、遺言の内容を筆記し、署名・押印が必要となる。隔離された状態でも遺言を残すことができるため、被相続人の意思を確実に反映する手段として利用される。

特別方式遺言の効力と家庭裁判所の確認

特別方式遺言は、緊急時における簡易な手続きで作成されるが、その効力を発揮するためには、家庭裁判所による確認が必須である。遺言作成後、証人や関係者が20日以内に家庭裁判所に申請し、裁判所が遺言の内容や手続きに問題がないかを審査する。裁判所が確認を行わない場合、その遺言は無効となるため、迅速な対応が求められる。

特別方式遺言の期限と無効要件

特別方式遺言は、緊急時に適用されるため、被相続人がその後、通常の遺言を作成できる状態に回復した場合、6ヶ月以内に通常の遺言を作成しなければ、特別方式遺言は無効となる。また、作成手続きに不備があったり、家庭裁判所の確認が得られなかった場合も、遺言は無効とされる。

タイトルとURLをコピーしました