無限責任中間法人|構成員が無限責任を負う旧中間法人

無限責任中間法人

無限責任中間法人とは、かつて日本法において営利法人と非営利法人の中間的な存在として位置付けられていた組織形態である。構成員が法人の債務について無限責任を負う一方で、公益法人とも異なる独自の運営が認められていたが、2008年に施行された一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)により大幅な法改正がなされ、現在では新規設立が行えない形態とされている。社会的活動や事業を行う団体の多様化を背景に誕生したが、制度の複雑さと責任負担の大きさから広く普及するには至らず、法改正に伴い多くの団体が新制度へ移行した経緯がある。

制度の歴史

日本における無限責任中間法人の制度は、2002年(平成14年)に中間法人法が施行された際に設けられた形態の一つである。営利を目的とする株式会社や合名会社などとも異なり、公益目的を前面に掲げる社団法人や財団法人とも違う「中間的」な位置づけとして立法化された。社会貢献を重視しながらも、必ずしも公益性に特化せず、幅広い活動を行うことを念頭に置いた組織として注目されたが、債務に対する無限責任という特徴が敬遠される要因となり、多くは設立に至らなかったとされている。

無限責任の意味

一般的に無限責任とは、法人が債務を負った場合に、その債権者に対して構成員自身も制限なく責任を負うことを指す。通常の株式会社や有限責任事業組合(LLP)などであれば出資額を上限として負担が制限されるが、無限責任中間法人では構成員が自らの財産をもって債務を全額弁済する義務を負う可能性がある。このため、事業が成功すれば大きな裁量を持って活動できる一方で、経営リスクをすべて構成員個人が引き受けなければならないという厳しさが存在した。

中間法人法と一般法人法

中間法人法は、公益法人改革の一環として非営利法人の選択肢を増やす意図で制定されたが、2008年(平成20年)に一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)が施行されると、旧来の中間法人制度は廃止される方向へと進んだ。新制度では、法人が営利を目的としないかぎり、ほぼすべての社団が一般社団法人として設立できる仕組みになり、無限責任中間法人のように構成員が無限責任を負う必然性は薄れた。既に設立されていた団体に対しては経過措置が設けられ、多くが有限責任の一般社団法人へ移行するなどの手続きを取った。

設立数と実際の利用状況

中間法人法時代、有限責任と無限責任の両方を選択できる制度設計がなされていたものの、無限責任中間法人を選ぶ団体はごく少数にとどまったといわれる。これは無限責任のリスクの大きさに比して、特別な税制優遇や有利な融資制度が存在しなかったため、個人資産への影響を懸念して二の足を踏むケースが大半を占めたためと推測される。また、法人格そのものの認知度も低く、行政や金融機関、取引先からの理解を得るのが困難だったことも要因の一つとされている。

組織運営上の特徴

無限責任中間法人は組織としての活動にかなりの自由度を持ち得た一方、その自由と引き換えに構成員が全面的に経営リスクを負うという制度的特徴を有していた。定款の定めによっては定款変更や利益配分などについても柔軟に決めることが可能で、他の法人形態よりも構成員同士の合意を重視する点が魅力であるとされていた。とはいえ、債務に対する責任が無限であることから、外部資金調達や新規加入者を募る際に困難が生じるという実態があった。

現行制度への移行と廃止

無限責任を含む中間法人法上の法人形態は、一般法人法の施行に伴い新設が不可能となり、現存する無限責任の団体も移行手続きを完了させるか、事業を閉鎖するなどの対応が進められている。経過措置期間内に一般社団法人へ移行した団体は、有限責任となることで組織運営の安定性が向上し、社会的信用も得やすくなったといわれる。一方で、無限責任による強固な結束や、柔軟な意思決定を活かしていた団体にとっては、移行後の体制が必ずしも最適ではない場合も想定されるが、全体的には新制度への移行が優勢である。

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