炭素繊維強化炭素複合材料(C/C)
炭素繊維強化炭素複合材料(C/C)は、炭素繊維を炭素基材で補強した複合材料であり、極めて高い耐熱性、軽量性、高強度を兼ね備えている。炭素繊維強化炭素複合材料(C/C)は、通常の炭素繊維の特性に加えて、マトリックスに炭素を使用することで、高温での安定性と耐酸化性がさらに向上している。そのため、航空宇宙分野やレース用自動車などの高温高圧環境で使用される部品に適している。炭素繊維強化炭素複合材料(C/C)は特に、熱に対する耐性が極めて高く、2000℃を超える温度でも性能を維持することができるため、極限環境での使用が期待されている。
炭素繊維強化炭素複合材料の特性
炭素繊維強化炭素複合材料(C/C)の最大の特徴は、その極めて高い耐熱性である。この材料は摂氏2000℃を超えるような高温環境でも形状や強度を維持することができるため、通常の金属やセラミックスでは耐えられないような環境でも使用可能である。炭素繊維による強化により、高強度かつ軽量であり、航空機や宇宙船の部品、特に熱遮蔽材やブレーキディスクなど、極端な条件での使用に最適である。また、C/Cは非常に優れた熱衝撃耐性を持ち、急激な温度変化にも耐えることができる点が利点である。さらに、耐摩耗性にも優れており、摩擦が発生する環境でも安定した性能を提供する。
ドイツのアーヘン工科大学と東京工業大学は、大学間学術交流協定を締結しています。この度、同大学のテキスタイル技術研究所が開発に携わっている炭素繊維強化複合材料製の弦楽器(バイオリン2丁、ビオラ、チェロ各1丁)が、関係者のご尽力により本学管弦楽団に寄贈されることになりました。 pic.twitter.com/TzWGLCflub
— 東京科学大学管弦楽団 (@titech_kangen) December 21, 2019
応用分野
炭素繊維強化炭素複合材料は、その高い耐熱性と耐衝撃性から、航空宇宙分野で広く利用されている。具体的には、宇宙船の大気圏再突入時に使用される耐熱シールドや、ロケットのノズルライナーとして用いられ、過酷な高温環境でも形状を維持する性能が求められている。また、自動車レースの分野でも、炭素繊維強化炭素複合材料はブレーキディスクとして使用されており、非常に高いブレーキ力と耐久性を発揮している。さらに、工業用機械部品や、エネルギー産業における高温・高圧の環境で使用される耐摩耗部材としても、炭素繊維強化炭素複合材料の優れた性能が活用されている。
薪割り台『炭畳』は炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)という素材を使用しております。
そのため1枚約240gと一般的な薪割り台と比較し軽量です。
また1辺の大きさが125mm(厚み10mm)の正方形とコンパクトなサイズにいたしました。苦無と共に持ち運びやすい重量とサイズになっております🥷 pic.twitter.com/P598RabiWV
— 刃物屋『福善』【公式】 (@hamonoyaFukuzen) August 31, 2022
メリット
炭素繊維強化炭素複合材料の利点は、まずその優れた耐熱性にある。通常の炭素材料では達成し得ない高温でも安定して性能を発揮するため、特に高温環境での使用に適している。また、炭素繊維によって補強されているため、軽量でありながら高強度を持つ点も大きな利点である。さらに、熱衝撃耐性が高く、急激な温度変化にも耐えられることから、使用条件の厳しい環境でも信頼性が高い。耐摩耗性に優れており、摩擦や摩耗が発生する機械的な応力にも強いため、ブレーキ部品などの摩擦が重要な用途で特に有効である。
月や火星を目指す有人宇宙船にふさわしい素材を発見https://t.co/JLUjIj1jZ5
地球の磁場を離れて宇宙放射線が強い環境に宇宙飛行士を運ぶ宇宙船の材料には、従来のアルミニウムよりも炭素繊維強化プラスチックなどの複合材料が向いているようだ。 pic.twitter.com/RZdQAzzT4C
— アストロアーツ (@AstroArts) September 16, 2021
課題と注意点
炭素繊維強化炭素複合材料にはいくつかの課題も存在する。まず、製造コストが非常に高く、特に複雑な形状の製造には時間と技術が必要であるため、コスト効率が低いことがある。また、炭素は酸素と反応して酸化するため、高温環境下で酸化が進むと材料が劣化する恐れがある。これを防ぐために、通常、酸化防止のためのコーティングが施されるが、これも製造コストを押し上げる要因となる。さらに、リサイクルが難しく、使用後の廃棄物としての処理が課題である。C/Cの特性を十分に引き出すためには、適切な使用環境を確保することが重要であり、酸化対策などの保護措置が必要である。
炭素繊維強化炭素複合材料と他の複合材料の比較
炭素繊維強化炭素複合材料は、他の複合材料と比較して極めて高い耐熱性を持つ。例えば、金属基複合材(MMC)と比較すると、MMCは高い強度と耐熱性を持つが、炭素繊維強化炭素複合材料のように2000℃を超える環境での安定性は持たない。また、繊維強化セラミックス(FRC)と比べても、炭素繊維強化炭素複合材料は熱衝撃に対する耐性が高く、急激な温度変化に対しても破壊されにくい。一方で、炭素繊維強化炭素複合材料は製造コストが高く、酸化対策が必要な点で課題があり、コスト面や環境条件に応じた選択が必要である。それぞれの特性を踏まえた用途選定が重要であり、特に極限環境下での使用において炭素繊維強化炭素複合材料は強力な選択肢となる。
今後の展望と応用可能性
今後、炭素繊維強化炭素複合材料の利用は、特に航空宇宙分野やエネルギー分野でのさらなる拡大が期待されている。航空宇宙分野では、再使用型ロケットや次世代の宇宙船における耐熱シールドとしての利用が進むと考えられ、高温での安定した性能が求められる場面で炭素繊維強化炭素複合材料が貢献する。また、エネルギー産業においても、高効率な発電設備の耐摩耗部品として炭素繊維強化炭素複合材料の需要が増えることが予想される。技術の進歩により、製造コストの削減と性能の向上が進めば、炭素繊維強化炭素複合材料はさらに多くの産業分野で採用されるだろう。これにより、炭素繊維強化炭素複合材料は未来の高性能素材として重要な役割を果たし続けることが期待される。