流線|速度ベクトルに沿う連続曲線

流線

流線とは、ある瞬間 t=t0 における速度ベクトル場 v(x,t0) に各点で接する曲線である。曲線 r(s) の接ベクトル dr/ds は常に v に平行で、場の瞬間的な構造を示す。定常流では粒子の軌跡や流脈と一致するが、非定常では一致しないため、可視化結果の解釈では流線と流跡線・流脈の区別が重要である。

定義と数学的表現

時刻 t0 を固定し、r(s) を流線とすると dr/ds=αv(x,t0) を満たす(α>0)。2D 非圧縮では流れ関数 ψ を用いて u=∂ψ/∂y, v=−∂ψ/∂x と書け、ψ=一定が流線となる。ポテンシャル φ が存在する無渦流では φ と ψ は直交し、等ポテンシャル線は流線と交わらない。

連続の意味と性質

流線を横切る瞬間的な流れは存在せず、質量は流線に沿って移動する。固体壁面では壁面の接線方向が流線となり、はく離点付近では流線の向きが急変する。停滞点では速度が 0 となり、複数の流線が収束・分岐する。

定常流と非定常流

  • 流線は瞬間像である。定常なら流線=流跡線=流脈だが、非定常では異なる。
  • 実験のトレーサ(色素・煙)は多くが流脈であり、数値後処理の「pathline」は粒子軌跡であって流線ではない。

ベルヌーイとの関係

非粘性・定常・仕事や熱の出入りがない区間では、各流線に沿い p+½ρv^2+ρgz=一定 が成り立つ。異なる流線間で値は一般に異なるため、比較は同一流線上で行う。粘性や回転が強い場合は修正が要る。

曲率と圧力勾配

流線曲率半径を R、法線方向を n とすると、オイラー式より ∂p/∂n=ρv^2/R が得られる。すなわち流線が強く曲がるほど外向きに低圧が生じる。逆圧力勾配では境界層が減速し、はく離して流線が剥がれる。

境界層と剥離

壁面近傍では粘性により速度勾配が大きく、流線は壁に沿って密集する。逆圧力勾配で壁面せん断応力が 0 に近づくと流線が外側へ反転し剥離泡が形成される。翼型やディフューザの損失低減ではこの流線制御が核心である。

可視化の方法

  • 色素流脈(液体)、スモークワイヤ(気体)は主に流脈を示す。
  • 油膜法は壁面流線の方向を示す。
  • PIV は速度場を測定し、後処理で流線を計算できる。

CFDにおける描画

CFD 後処理ではベクトル場にシード点を置き積分して流線を描く。シード配置により見え方が大きく変わるため、壁面近傍や剥離域など物理的関心領域に適切に撒くことが解釈の鍵である。

流体機械での利用

ノズル・ディフューザ・ターボ機械では流線に沿う滑らかな形状が損失を抑える。インペラ出口角や案内羽根角は設計点の流線方向と整合させる。流線の密度は速度の大小の目安にもなる。

座標と流れ関数

2D 非圧縮では流線は ψ=定数、等ポテンシャル線 φ=定数と直交する。複素速度 W=u−iv を用いると複素ポテンシャル F=φ+iψ が定義でき、等高線図から流線群を設計に活用できる。

圧縮性・粘性の影響

高速(高 M)や強粘性では等エンタルピや等圧線と流線の整合が崩れる。ベルヌーイの単純形は使えず、エネルギ式の損失項や境界層方程式を併用して流線の曲がりと圧力場を評価する。

よくある誤解

  1. 流線は粒子の通った跡ではない(非定常)。
  2. 流線同士は交差しない(停滞点を除く)。
  3. 可視化線が常に流線を示すとは限らない。

設計・解析の手順例

  1. 目標条件(流量、圧力、Re)と形状を定める。
  2. CFD やポテンシャル解で速度場を得る。
  3. 関心領域にシードを置いて流線を積分する。
  4. 曲率・圧力勾配から剥離や損失を診断する。
  5. 形状・条件を更新し流線の滑らかさを改善する。

記号と単位

  • v [m/s], p [Pa], ρ [kg/m^3], R [m]
  • ψ [m^2/s], φ は速度ポテンシャル、Re は Reynolds 数
  • n は流線法線、t は流線接線方向