快削黄銅(C3604)
快削黄銅(C3604)は、銅と亜鉛に鉛(Pb)を添加した黄銅合金であり、切削加工性が特に優れているのが特徴である。主成分は約60%の銅と40%の亜鉛で、さらに少量の鉛が含まれていることで、切削時のバリを抑え、精密な加工が容易となる。このため、快削黄銅(C3604)は量産部品や複雑な形状の加工品に適した材料であり、広範な用途で使用されている。JIS規格に基づいており、真鍮系合金の中でも特に加工性に特化した種類である。
材料特性
快削黄銅(C3604)の最大の特性は、鉛を含有することによる優れた切削性である。鉛の添加により、切削工具の摩耗が少なく、加工面が滑らかに仕上がる。また、引張強度や硬度が適度で、機械加工後の形状保持性が高い。快削黄銅(C3604)は他の黄銅と同様に、熱伝導性や電気伝導性が比較的良好であり、電気部品や機械部品などで幅広く利用される。耐食性も良好で、大気中での酸化を抑えることができる。
弊社の商品+切断(例)
C3604 四角棒 □30
切断精度 ±0.1(~0.2)
結局削られちゃうけど、切断面ピカピカです😅 pic.twitter.com/P3NabqWPK2
— 高橋勇佑 | 埼玉で材料買うなら高橋商店 (@GaochaoSyouten) June 1, 2020
「快削」という名前
快削黄銅(C3604)の「快削」という名前は、鉛の添加によって切削加工が非常に容易であることを意味している。これにより、大量生産が求められる分野での利用が促進されている。
用途
快削黄銅(C3604)は、主に大量生産される精密部品に用いられる。代表的な用途には、ネジ、ナット、ボルト、バルブ部品、継手、計器類の部品などが含まれる。これらの部品は切削加工を前提としており、高精度で大量生産が可能な快削黄銅(C3604)は理想的な材料である。また、鉛の含有により良好な潤滑性を有し、加工効率を向上させることができるため、自動車部品や電気接点部品としても利用されている。
メリットとデメリット
快削黄銅(C3604)のメリットは、その切削加工性の高さにある。大量生産に適した材料であり、工具の摩耗を抑え、高速での精密加工が可能である。また、耐食性も良好で、多くの機械部品や電気部品に使用されている。一方で、鉛を含有していることがデメリットとなり、環境への影響や特定の用途に対する制約が存在する。また、鉛の含有により、規制が厳しい地域や用途では使用が制限されることがある。
加工性
快削黄銅(C3604)は鉛の添加により、優れた切削加工性を有している。この特性により、工具の摩耗が少なく、切削抵抗も小さいため、高速かつ高精度な加工が可能である。特に自動旋盤での加工に適しており、大量の小型部品の製造でその利便性が発揮される。また、切削面が滑らかに仕上がるため、追加の仕上げ作業を最小限に抑えることができる。
材料が快削黄銅のラックギアです。サクサク切れます。 pic.twitter.com/d5DnBXKbQf
— 小原歯車工業株式会社 (@khkstockgears) October 6, 2021
耐食性
快削黄銅(C3604)は大気中や淡水中での耐食性が良好であり、長期間の使用においても表面の劣化が少ない。ただし、鉛を含有しているため、特定の化学環境下では腐食のリスクがある。また、鉛の溶出が懸念されるため、食品や飲料水と接触する用途には適していない。このため、使用環境に応じた適切な設計が必要となる。
環境対応とリサイクル
快削黄銅(C3604)はリサイクル可能な材料であり、銅や亜鉛、鉛を再利用することで環境負荷を軽減することが可能である。しかし、鉛を含有していることから、リサイクル時には鉛の分離と管理が求められる。鉛は環境に対して有害であるため、適切な処理が不可欠である。それでも、リサイクルを通じて資源の有効利用が可能であり、持続可能な材料としての役割を果たしている。