強制振動
外力によって振動が継続する現象を強制振動という。自由に減衰して止まる系でも、外力が時間的に変化しながら作用すると振動は定常的に続く。機械の回転不釣合い、歯車のかみあい誤差、道路凹凸による車体応答など、多くの実機は強制振動の設計対象である。固有振動数と外力の周波数が近づくと共振が起こり、疲労破壊や騒音増加につながるため、周波数応答の理解と制御が重要である。設計では、減衰付与、周波数分離、アイソレーション、動吸振器の活用などで強制振動を抑える。
定義と基本概念
強制振動は、系の内部特性に依らず外部からの励振で生じる振動である。外力の種類は調和励振、衝撃、ランダム励振に大別され、線形1自由度系では入力と出力が周波数領域で線形関係を持つ。過渡応答(自由成分)と定常応答(外力と同じ周波数成分)を区別し、十分時間が経てば自由成分は減衰して定常応答のみが支配的となる。
運動方程式
質量m、減衰c、ばね定数kの1自由度系に外力F(t)が作用するとき、運動方程式はm x”+c x’+k x=F(t)である。ここでxは変位である。F(t)=F0 cos(ωt)の調和励振では、x(t)は過渡応答に加えて定常解xss=X cos(ωt−φ)をもつ。固有角振動数ωn=√(k/m)、減衰比ζ=c/cc(cc=2√(km))を用いると無次元化が容易である。
調和外力の定常応答
周波数比r=ω/ωnとすると、振幅倍率は|H(ω)|=X/(F0/k)=1/√{(1−r^2)^2+(2ζr)^2}で与えられる。すなわち強制振動の振幅は低周波域で準静的(X≈F0/k)、r→1で増大し、高周波域では慣性が効いてX≈F0/(mω^2)に減少する。設計では期待動作域で|H(ω)|を許容値以下に保つ。
位相差とベクトル表示
位相差φはtan φ=(2ζr)/(1−r^2)であり、低周波で0、高周波でπに漸近する。複素ベクトル(フェーザ)表示では、動的剛性k−mω^2+j cωによりX~=(F0)/(k−mω^2+j cω)と書け、強制振動の振幅と位相が同時に評価できる。ここでjは虚数単位である。
減衰と共振の特徴
減衰比ζが小さいほど共振峰は鋭く高くなる。|H(ω)|の最大はζ≪1でr≈√(1−2ζ^2)付近に生じ、おおよそ|H|max≈1/(2ζ)である。構造設計では材料内部損失、粘弾性体、摩擦などでζを確保し、強制振動のピークを抑えることが基本戦略である。
伝達率と防振設計
機械を支持するアイソレータでは、床から機械への力や加速度の伝達率Tが指標となる。調和外力型の変位伝達率はT=√{1+(2ζr)^2}/√{(1−r^2)^2+(2ζr)^2}で、r>√2でT<1となり防振領域となる。ゆえに強制振動対策では固有周波数を十分に低く設計し、運転周波数から離す周波数分離が有効である。
基礎励振(加振台)
基礎がy(t)=Y cos(ωt)で動く場合、相対変位z=x−yでm z”+c z’+k z=−m y”が得られる。加速度励振ではr>√2で相対応答は小さくなる一方、低周波では強制振動として機械は基礎に追従する。配管、光学機器の据付では基礎振動の周波数特性を事前に測定し、支持系のωnを十分小さく設計する。
動的剛性と機械インピーダンス
強制振動に対する見かけの剛性はK*(ω)=k−mω^2+j cωである。入力Fと出力速度v=jωXの比Z(ω)=F/vは機械インピーダンスで、低周波ではばね支配、高周波では質量支配に移行する。インピーダンス整合・ミスマッチの観点で加振機と試験体の結合を評価できる。
主な記号
- m: 質量、k: ばね定数、c: 減衰係数(強制振動の基本パラメータ)
- ω: 加振角速度、ωn: 固有角振動数、r=ω/ωn
- ζ: 減衰比、F0: 調和外力の振幅、X: 応答振幅、φ: 位相差
- H(ω): 周波数応答関数、Z(ω): 機械インピーダンス
測定と同定の実務
実験ではインパクトハンマやシェーカで加振し、加振力と応答を同時計測してFRF=出力/入力を求める。半値幅法によりζ≈(ω2−ω1)/(2ωn)が推定でき、モデル化した|H(ω)|と測定FRFの整合確認で強制振動の支配パラメータを同定する。境界条件の再現とセンサ配置が精度を左右する。
動吸振器の原理
主系に付加質量maとばねkaを結合した動吸振器は、目標ωtに合わせてωa=√(ka/ma)を調整する。調整が適切なら強制振動の応答曲線は2峰化し、目標周波数近傍の主系振幅が大きく低減する。質量比μ=ma/mと減衰の選定が性能を決め、建築のTMDや工作機械のびびり対策に広く用いられる。
数値例
m=1.0 kg、k=1000 N/m、c=5.0 N·s/mとし、F0=10 Nの調和加振を考える。ωn≈31.62 rad/s、ζ=c/cc=5/(2√(1000))≈0.079である。r=1付近で|H|max≈1/(2ζ)≈6.3、X≈(F0/k)|H|≈0.01×6.3≈0.063 mとなり、大きな強制振動が生じる。ζを0.2へ増やせば|H|max≈2.5、X≈0.025 mへ低減できる。
設計上の留意点
強制振動は入力の周波数内容、系の非線形性、隙間や摩擦の有無で様相が変わる。多自由度系ではモード重ね合わせにより各モードのFRFを合成し、支配モードの分離と減衰付与を行う。実機ではばらつきで固有値が移動するため、周波数分離に安全余裕を設け、固定・締結・潤滑など保全でパラメータ変動を抑えることが重要である。