導電率計
導電率計は、水溶液に含まれるイオンの移動により生じる電気伝導の度合い(電気伝導率)を測定する計測器である。水質管理、化学プラント、ボイラや冷却水のブローダウン制御、半導体の超純水、食品・発酵・農業の養液管理など用途が広い。測定は電極間に交流を印加して電気伝導度を求め、単位はS/mのほか実務ではmS/cmやµS/cmが用いられる。温度影響が大きいため自動温度補償(ATC)で25℃換算値を指示するのが一般的である。
測定原理とセル定数
電解質溶液の伝導は陽イオン・陰イオンの移動に起因する。電極間の導電度Gから電気伝導率κを求める際、電極の幾何に依存するセル定数Kを用いてκ=K×Gとして扱う。Kは電極間距離と電極面積で決まり、標準液で校正して決定する。直流では電極反応や分極が生じるため、数百Hz〜数kHz程度の交流で測定するのが通例である。
方式と構造(接触式・誘導式、2電極・4電極)
接触式は電極が液に直接触れる。低〜中導電率域では4電極方式が分極の影響を抑え、広いレンジで安定する。2電極は構造が簡便で洗浄しやすい。高導電率や汚れ液ではコイル結合を用いる誘導式(トロイダル式)が有効で、被膜付着に強く保守が容易である。材質はSUS、チタン、グラファイト、PEEKなどが選定され、温度センサ(Pt100/Pt1000)を内蔵してATCを行う。
単位と指示(S/m、mS/cm、µS/cm、比抵抗)
表示単位はmS/cmやµS/cmが実務で最も多い。超純水領域では電気抵抗率(MΩ・cm)表示を採用する計器もある。濃度や温度により桁が変化するため、オートレンジ機能や対数目盛の指示が有用である。管理基準は25℃換算のκ(または抵抗率)で規定するのが望ましい。
温度補償と校正
多くの無機塩水溶液は概ね1〜2%/℃の温度係数を示すが、溶質により係数は異なる。装置のATCには直線補償や溶液特性に合わせた非線形補償があり、用途に応じて設定する。校正はKClなどの標準液で1点または2点実施し、セル定数Kを更新する。汚れや被膜は見かけのKを変化させるため、洗浄→再校正の順に行う。
測定方法と設置
浸漬型は槽内の代表点で測る。配管ではフローセルや直挿型を用い、気泡混入や電極の向きに留意する。乱流域での均一な流速が望ましく、流路のデッドスペースや電極近傍の堆積は誤差要因となる。上流下流の直管長やバイパス配管の流量確保も重要である。pH監視はpH計と併用し、プロセス全体で整合の取れた水質管理を構築する。
応用分野
- 超純水・純水管理(半導体、医薬、ボイラ給水)
- 上水・下水・工業排水のモニタリング
- 化学プロセス(中和、混合、抽出、濃縮ライン)
- めっき浴・洗浄水の置換時期管理
- 食品・発酵・飲料・農業養液の濃度管理
- 冷却水のブローダウン制御、腐食・スケール抑制
選定ポイント
- レンジとセル定数:測定域(µS/cm〜数百mS/cm)に適合するセンサを選ぶ。
- 方式:汚れ・高導電率は誘導式、低導電率は4電極接触式が有利。
- 耐食・耐温圧:材質、シール、耐圧、耐温範囲、CIP/SIP可否。
- 温度補償:Pt100/Pt1000の配置、25℃換算のアルゴリズム。
- 据付:流路形状、気泡対策、洗浄性、ケーブル長とノイズ対策。
- 検証:標準液による定期点検、校正証明とトレーサビリティ。
TDS換算(導電率→溶解固形分)の注意
TDSはκに係数(例0.5〜0.8)を掛けて近似するが、溶質組成で係数は変動する。品質保証や規制値判定では重量法などの一次手法で妥当性確認を行うべきである。導電率は「イオンが運ぶ電荷量」を見ており、非電解質や弱電解質の寄与は小さい。
メンテナンスとトラブルシューティング
被膜付着や油分は値を低下させ、気泡は瞬時に高抵抗を示す。酸・アルカリや界面活性剤での洗浄手順を整備し、必要に応じて誘導式へ切替える。低レンジでの分極は4電極で軽減できる。配管振動やノイズにはシールド・接地の見直しが有効である。流速監視は流量計や電磁流量計、差圧監視は差圧計、粘性や固形分影響は粘度計、密度・濃度補助は密度計や比重計、配管内流速評価はピトー管の記事が参考になる。
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