唯物史観|マルクス・エンゲルスによる唯物論的歴史観

唯物史観 Historischer Materialismus

唯物史観(史的唯物論)とは、マルクス・エンゲルスが確立した、唯物論的な社会観・歴史観である。唯物論の土台のうえに、ヘーゲルの弁証法の考え方を取り入れることによって確立された。唯物史観において、社会や歴史の基礎をなすものは、人間の物質的生産活動であり、その経済的な土台のうえに、法律・政治・学問などの精神的活動の所産が成立する。歴史は物質的生産活動の中の矛盾を原動力として発展していく。

マルクス

マルクス

フォイエルバッハとヘーゲルの影響

マルクスの青年時代に、は、ヘーゲルを中心とするドイツ哲学、アダムスミスに代表されるイギリス古典派経済学、フランス社会主義などを吸収しながら自らの思想を気づきあげた。特に唯物史観においてその影響を与えたのはフォイエルバッハとヘーゲルの弁証法の両者である。
マルクスによれば、フォイエルバッハは精神よりも自然が根源的だとして唯物論を唱えたことを高く評価しているが、自然を人間から独立した永遠不変のものと見なしたことは批判的である。そして、ヘーゲルが彼の偉大なる弁証法に明らかにしたように、歴史は常に弁証法的に運動している。とはいえ、この運動の原動力はヘーゲルが説く「精神」(絶対精神)ではなく、人間の「労働」によってである、とした。人間は労働によって物質的自然をつくりかえ、これを介してみずからの社会関係をつくりだし、さらにそれによってみずからの意識を規定していくとした。

弁証法的唯物論

唯物史観では、歴史は、生産力と生産関係とのあいだの矛盾を弁証法的に衝突しながら発展していくと考える。生産力の増大が新たな生産関係の確立を呼びおこし、生産関係の根本的変革が革命として現れ、やがて社会制度や精神的文化も、この新しい土台にふさわしいものに変化するという。

上部構造・下部構造

唯物史観によれば、下部構造と上部構造で社会の骨組みがなっている。下部構造とは、社会の基礎をなすもので、その社会の生産様式であり、それを下部構造という。この下部構造を土台とし、上部構造が成立しているが、上部構造とは、政治制度や文化(哲学・宗教・芸術・道徳)である。たとえば、自由主義国家の土台は資本主義という生産様式であり、そこでの文化は資本主義文化ということになる。

唯物史観

人間たちは、自らの生活を社会的に生産するさいに、彼らの意志から独立した。一定のその生産に必要な関係を受け容れる。人間の物質的生産諸力の一定の発展段階に対応する生産諸関係が、その関係である。この生産諸関係の総体が社会の経済的構造を形成している。
この社会の経済的構造こそ、法的および政治的な上部構造がその上にそびえたつ現実的な土台であり、さらに一定の社会的意識形態が対応する現実的な土台である。物質的生活の生産様式が社会的、政治的および精神的な生活のプロセス一般を制約しているわけである。
人間の意識が人間の存在を規定するのではない。逆に人間の社会的存在が人間の意識を規定する。社会の物質的な生産諸力は、その発展のある段階に到る前までは、既存の生産諸関係の内部で拡大を続ける。しかしその発展のある段階に達すると、既存の生産諸関係と矛盾するようになる。あるいはまた生産諸関係を法的な表現に代えただけだが、所有者関係と矛盾するようになる。この諸関係は、生産力を発展させる形式から、これを束縛するものに転じる。社会革命の時代(Epoche[エポック)はこの時に始まるのである。経済的土台の変化にともない。
巨大な上部構造の全体が徐々に、でなければ急激に転換する。

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