元付け|売主や貸主から直接依頼を受け、物件を管理・仲介する

元付け

元付けとは、不動産取引において売主や貸主から直接依頼を受け、物件を管理・仲介する立場を指す言葉である。一般的に不動産会社は「元付け」と「客付け」の両面で活動するが、元付けでは物件オーナーと直接的な契約関係を結んでいる点が特徴となっている。売主や貸主の利益を確保しつつ、物件の管理や媒介契約の締結を行い、買主や借主の募集までを一貫してサポートする役割を担っている。

用語の背景

不動産仲介には「客付け」という買主や借主側に立った仲介と、「元付け」という売主や貸主側に立った仲介がある。日本の不動産市場では、不動産会社が両方の立場を兼ねる場合が多く、一方の物件を別の側面から仲介する体制を整えている。元付けは物件の情報を最初に握る立場にあるため、情報量や契約条件の交渉などで大きな影響力を持ちやすく、そのぶん責任も重いとされる。

業務内容

元付けの業務は、まず物件のオーナーと媒介契約を締結することから始まる。契約後は物件調査や市場価格の査定、広告宣伝などを行い、買主や借主を募集する。問い合わせ対応や内覧調整、契約書類の作成・説明を経て、売買や賃貸借契約の成立に至るまでが基本的な流れとなる。また、物件に関する法的問題やリフォーム・リノベーションの提案をするケースもあり、オーナーと二人三脚で契約条件の策定を進める点が大きな特徴である。

客付けとの違い

客付けの不動産会社は買主や借主側の要望を叶えるために物件を紹介する立場であり、元付けは売主や貸主の希望条件に合わせて買主や借主を探す立場といえる。このため情報開示や交渉の重点が異なり、元付けの業者はオーナーの利益を守るために売却価格の下限や賃貸条件をしっかりと把握する。一方、客付け側は顧客である買主や借主のニーズに沿った物件の提案を優先するため、契約内容や諸条件で互いに折り合いをつける調整役が必要とされている。

両手仲介との関係

不動産会社が「元付け」と「客付け」を同時に担う形態を「両手仲介」と呼ぶ。これは1社で売主と買主の両方を仲介する方法で、成功報酬として両側から仲介手数料を得られる点が特徴である。ただし、両手仲介には利益相反のリスクが存在し、取引の公正性や透明性を保つために十分な説明責任が求められる。このため、近年では「片手仲介」を推奨する流れもあり、元付けの立場としても公正な取引をどう実現するかが課題となっている。

メリットと注意点

元付けの最大のメリットは、物件の情報を最初に手にする立場にあることから、販促計画や取引条件を主導しやすい点にある。売主や貸主との信頼関係を築くことで、専属的に仲介業務を行い、高い成約率や報酬を得やすくなる。一方で、物件に関する重要事項や瑕疵(かし)などを的確に把握し、公正な開示を行わなければトラブルにつながるリスクが高まる。信頼を損ねれば追加の取引機会を失う可能性もあるため、専門知識と倫理観を持って対応する必要がある。

近年の動向

インターネットの普及により、不動産ポータルサイトやSNSを通じて物件情報が広く共有されるようになっている。そのため、元付けとしての優位性は以前ほど絶対的ではなくなりつつあるが、物件や地域に密着した実地の調査力やオーナーとの深いコミュニケーション力は依然として重要視されている。また、情報開示の透明性や適正な仲介手数料の設定を巡る社会的な要求が強まっており、業者としても公正・誠実な取り組みが求められている。

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