二重価格表示|価格を比較対象とする手法と規制

二重価格表示

二重価格表示とは、商品やサービスの価格を比較対象とする別の数値と組み合わせて提示することで、消費者に割引やお得感を強く訴求しようとする手法である。たとえば値下げ前の価格と値下げ後の価格を並べて示す例が代表的であり、実際にはあまり値下げ幅が大きくないにもかかわらず「大幅値下げ」を装うなどの問題が指摘されてきた。適正に運用されれば消費者が価格動向を把握しやすくなる一方で、不当な表示が行われた場合には購買意欲を煽る虚偽や誤認を引き起こし、企業の信頼や市場の公正性を損なう恐れがある。こうした表示に関しては各国の法律やガイドラインで規制が行われており、日本においても景品表示法などにより取り締まりの対象となっている。近年はインターネット通販の普及とともに価格表示の多様化が進み、消費者側にも正確な情報を見極めるリテラシーが求められているため、企業や団体はより透明性を高めた情報開示を実践することが重要となっている。

定義と概要

価格を比較対象とする表示には、消費者が特定の商品やサービスを購入する際の判断材料を提供するという利点がある一方で、過大広告や誤認を引き起こす危険性が内在している。特に二重価格表示においては、実際に存在しない高額な「元の価格」や過大な割引率を示す行為が問題視されることが多いのである。たとえば「通常価格〇〇円のところ、今だけ半額」などのフレーズが代表例であるが、その通常価格が実際には一時的に設定された高値であったり、販売実績のない価格であったりすると、景品表示法上の不当表示とみなされる可能性がある。正当な比較価格を提示するには一定期間の販売実績や客観的根拠が求められており、曖昧な根拠で値下げをうたう行為は消費者への誤導につながるリスクが高いとされている。

主な手法と問題点

従来はチラシや店頭ポップで多用されていた二重価格表示であるが、近年ではネット通販でも「セール価格」「キャンペーン価格」「アウトレット価格」など、さまざまな名目で横行する傾向にある。これらは一見、消費者に対して購買機会を広げたり、より安価な選択肢を提供したりしているように見えるが、裏を返せば実際の販売実績や適正な期間・価格を示さずに高割引率だけを強調するケースがあるということでもある。たとえば商品ページに常時表示されている期間限定セールや、販売開始からずっと同価格であるにもかかわらず「今だけ値下げ」と宣伝するなど、法令違反に抵触しかねないグレーゾーンの手法が散見される。結果として、消費者が誠実な事業者と不誠実な事業者を見分けにくくなり、市場全体の健全性が脅かされるといえる。

規制とガイドライン

日本では二重価格表示に関して、主に景品表示法がその取り締まり根拠とされている。消費者庁はガイドラインを公表し、過去に販売実績のない価格を「通常価格」として表示することや、短期間しか設定していない価格を「通常価格」とすることを不当表示として禁止している。また一定期間以上の販売実績がないにもかかわらず「通常価格」と称して割り引くのも違法性が高く、実際に行政処分を受ける事例も散見されている。さらに公正取引委員会や業界団体が行う自主的な監視や取り締まりも重要であり、事業者は正確な情報提供に努めることで、消費者の信頼を確保する必要があるといえる。海外でも、欧州連合の指令や米国の連邦取引委員会(FTC)による規定など、消費者保護を目的としたさまざまな対策が講じられている。

事例と対策

過去には大手通販サイトで恒常的に割引率を大きく見せる二重価格表示が問題となり、消費者庁の調査を受けて修正・謝罪に至った事例がある。こうした事態を防ぐには、企業側が過去の販売実績や期間を明示したうえで、誤解を招かないように正確な価格表示を行うことが不可欠である。さらに、消費者自身も複数の販売サイトや店舗の価格を比較し、根拠の曖昧な「割引」に安易に飛びつかないリテラシーを身につけることが望ましいとされている。技術的には、販売履歴や価格変動のデータを可視化するサービスなども登場しており、これを活用することで不当な表示を見抜く手がかりを得ることが可能となっている。公正な価格表示が行われる市場を実現するためには、事業者・行政・消費者がそれぞれの立場から協力し、透明性を高めていく取り組みが求められる。

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