ホールダウン金物
ホールダウン金物とは、木造建築における柱と土台、あるいは柱と梁の接合部を強固に固定するための金属製パーツである。地震や台風などの水平力が加わった際に、柱が土台から抜け上がるのを防ぎ、構造全体の耐震性や耐風性を向上させる役割を果たしている。施工時にはアンカーボルトなどを併用してしっかりと固定することで、想定以上の外力にも抵抗できる堅牢な構造を実現できるため、木造住宅の安全性を高める上で重要な存在といえる。
概要と役割
ホールダウン金物は、木造住宅の四隅や耐力壁周辺の柱に取り付けられることが多く、従来から用いられていたかすがい金物などと比較して、より強固な引き抜き耐力を備えている。地震や強風による揺れは上下方向だけでなく、建物に水平・回転方向の力も作用させるため、柱が土台から浮き上がる「柱の引き抜き」現象が発生しやすい。これを防ぐために使用されるのがホールダウン金物であり、木造構造物の根幹を支える強度確保の要といえる。
高耐力ホールダウン金物、形がかっこいいですね。なので作ってみました。
コンクリートに埋め込んで上が700mmも出てるんですね。実際の長さが分かるのが3DCADです。#3DCADですシリーズ pic.twitter.com/VK0LvNG3gl
— 叢雨(むらさめ)メタバースコンシェルジュ (@murasametaverse) April 27, 2024
構造的メリットと設計意図
ホールダウン金物を正しく設計・施工することで、建物全体の耐力壁が効率的に機能し、壁倍率を最大限に発揮できる。これは、柱と土台の接合が堅牢になるため、耐力壁が想定通りに水平力を負担しやすくなることに起因する。また、基礎部分との結合部がしっかり固定されることで、建物全体が一体化しやすくなり、外力による変形や破損リスクが抑えられるというメリットがある。設計段階では、力の流れや地震力の大きさを想定して、必要な許容引き抜き力に見合うサイズと仕様のホールダウン金物を選定することが重要である。
木構造のキホン⑪
現在の建築基準法だと柱梁の継目の計算をする
また要所要所にはホールダウン金物で基礎とガッチリくっつけるのが主流
なので築浅の家で耐震性が低いと、柱は抜けず、2階建ての2階が横にスライドするように落ちる
道路を塞いだり隣家にもたれかかるリスクあり
耐力壁増やしましょう pic.twitter.com/XODGw25LIU— 早川浩平/いつまでも変わらない日常を (@ez_structure) October 19, 2023
取り付け方法と施工プロセス
一般的な施工プロセスとしては、まず基礎や土台にアンカーボルトを埋め込んでから、柱を立てて金物を挟み込む形で固定する。ホールダウン金物自体にはボルト通し用の穴や座金などが設けられており、適切なトルクで締め付けることで初期のがたつきを防止する。施工時は柱の寸法やアンカーボルトの位置が合わないと適正な引き抜き力を確保できないため、基礎工事の段階から精度管理を徹底する必要がある。また、構造用合板や筋交いなどの他の耐力部材と重ならないように配慮しつつ、作業性を確保しながら正確に取り付けることが求められる。
大手HMより特定の工務店の方が高気密・高断熱が実現できるのは、断熱は人間性で成り立っているからです。同じ言葉でも「しっかりと断熱材入れました」の解像度が人によって違います。弊社が考える”しっかりと”は右の床の断熱材を土台木材まで隙間なく、ホールダウン金物の隙間もウレタンで埋めるです。 pic.twitter.com/pRRMph5Ull
— なちゃ夫@断熱おじさん (@7ciaod) March 8, 2025
求められる品質と規格
ホールダウン金物にはJISや公的機関の認定制度が存在しており、それぞれの金物がどの程度の引き抜き力や許容応力に耐えられるかが規格化されている。金物メーカーは試験機関での実験結果をもとに性能評価を取得し、設計者や施工者はこれらのデータを参照して製品を選定する。認定品を使用していない場合、行政上の確認申請や保険、瑕疵担保責任などにおいて問題が生じる可能性があるため、品質保証の観点からは信頼性の高い製品を使うことが望ましい。特に大地震が頻発する地域では、国や自治体が推奨する規格に適合したホールダウン金物を採用するケースが多い。
【お知らせ】
資料名:在来ホールダウン金物耐力表ありそうで無かった?各社金物メーカーで出されているホールダウン金物をまとめてみました✨
(柱脚のみは除く)条件によって耐力が変わる(枠材の有無など)ものや仕様部材の条件があったりするので、参考までにご確認いただければと思います🙏 pic.twitter.com/XIetXGJYEu
— 髙橋 秀樹|とある木造建築の情報収集家 (@H_Takahashi1110) January 10, 2024
他の接合金物との比較
ホールダウン金物は、構造金物の中でも特に引き抜き力に対して強い性能を発揮する点が特徴である。一方、かすがい金物やコーナープレートなどは、主に横方向の力や接合部の補強を目的として使用されることが多い。各種金物は補完的な役割を果たしており、建物の隅部や開口部周辺など、力の集中が起きやすい箇所を想定しながら組み合わせることで、木造建築としての総合的な耐力を引き上げられる。こうした金物の配置計画は、設計段階で構造計算や図面を用いて詳細に検討し、施工者との連携を密に図ることが肝要である。
注意点とトラブル事例
実務上、ホールダウン金物の取り付け位置がずれたり、アンカーボルトの締め付け不足があったりすると、本来想定していた引き抜き性能を発揮できない恐れがある。特に長期使用の中で微妙なゆるみが生じると、大きな地震が起こった際に金物が外れたり、柱が基礎から抜けたりといった重大な被害につながるリスクが高まる。また、金物まわりの腐食や錆が進行すると強度低下を招くため、床下の湿気対策や定期的なメンテナンスにも目を向ける必要がある。施工時の品質管理や建物完成後の点検が不十分だと、こうしたトラブルが大地震の発生時に顕在化しやすいといえる。
🪚施工事例🪚
🗾長野県(住宅)
ウッドフェンス🌲✨防腐処理等の種類・塗装・工法✨
・ObiREDにAZN乾式注入し防腐・防蟻処理とメンテナンス頻度の軽減に
・基礎を傷めないよう支柱用の穴はあけず、ホールダウン金物を使用。強風時の転倒防止に pic.twitter.com/lMviH6oFTk— 木のある暮らしを応援🌲ラブキノヘイ (@lovekinohei) February 7, 2023
施工管理との関連
ホールダウン金物の機能を最大限に生かすには、現場監督や施工チームとの連携が欠かせない。基礎アンカーの埋設位置から始まり、柱の姿勢や寸法、公差、締め付けトルクのチェックなど、ミリ単位の精度が求められる部分が多い。特に、実際の建築現場では木材の反りや収縮が発生することもあるため、仕口や継手部の微調整が必要となる場合がある。こうした手間を惜しまずに確実な施工を行うことで、ホールダウン金物の性能を発揮させ、結果として建物の耐震性向上につなげられる。定期的な施工検査や第三者機関によるチェックも有効であり、万全な品質管理体制が安心かつ長寿命な木造住宅の鍵を握るといえる。