ホワイトナイト
ホワイトナイトとは、企業の買収において、敵対的買収を受けそうになった企業が、友好的な第三者に援助を求めてその企業を救済する形で買収されることを指す。この第三者を「ホワイトナイト(白馬の騎士)」と呼ぶ。敵対的買収とは、買収者がターゲット企業の経営陣の同意を得ずに株式を取得し、経営権を握ろうとするもので、ターゲット企業にとって好ましくない条件での買収が行われる可能性がある。これに対し、ホワイトナイトはターゲット企業に友好的であり、企業価値の維持や従業員の雇用継続など、ターゲット企業の利益を守ることが目的とされる。
ホワイトナイトの役割
ホワイトナイトは、敵対的買収のリスクを軽減するために重要な役割を果たす。敵対的買収が行われると、企業の経営方針が大幅に変更される可能性があり、特に株主や従業員にとって不利益をもたらすことがある。ホワイトナイトは、ターゲット企業が敵対的買収を回避し、友好的な条件で合併や買収を行うことを助ける。これにより、ターゲット企業は、自社の独立性やブランド、企業文化を守ることができる場合がある。
ホワイトナイト戦略のメリット
ホワイトナイト戦略には、複数のメリットが存在する。第一に、ターゲット企業が望まない敵対的買収を回避できる点が挙げられる。ホワイトナイトはターゲット企業の経営陣と協調し、より良い条件での取引が可能となる。第二に、従業員の雇用や企業のブランド価値が守られることが多く、企業の長期的な成長を妨げない点も大きな利点である。また、株主にとっても、より高い買収価格が提示されることが多いため、投資価値が向上する可能性がある。
ホワイトナイトのリスク
ホワイトナイト戦略にもリスクが伴う。まず、友好的な買収者が必ずしもターゲット企業の経営を維持できるわけではないという点である。場合によっては、ホワイトナイト自体がターゲット企業の経営方針に影響を与え、意図しない方向に経営が変わることもある。また、ホワイトナイトとして登場する企業がターゲット企業を完全に救済できるかどうかは、経済状況や市場動向にも左右される。さらに、敵対的買収者との価格競争が激化することで、買収価格が急上昇し、結果としてホワイトナイト企業にとっても経済的な負担が大きくなることがある。
有名なホワイトナイト事例
ホワイトナイトの代表的な事例として、アメリカの石油企業テキサコ(Texaco)がペンゾイル(Pennzoil)を救済したケースがある。テキサコは敵対的買収を受けようとしていたペンゾイルに友好的な買収を提案し、敵対的買収者を退けた。また、日本においてもソフトバンクがヤフーを友好的に買収した際、ホワイトナイトとしての役割を果たした例がある。このような事例では、ホワイトナイトがターゲット企業を救済し、企業の経営方針やブランドを守ることに成功している。
ホワイトナイトと他の防衛策
ホワイトナイトは、敵対的買収に対する防衛策の一つであり、他にもさまざまな防衛策が存在する。たとえば、「毒薬条項(ポイズンピル)」や「クラウンジュエル戦略」などが代表的である。毒薬条項では、敵対的買収者が一定の割合以上の株式を取得した際に、既存株主に新株を低価格で購入できる権利を与えることで、買収コストを引き上げ、敵対的買収を阻止する。一方、クラウンジュエル戦略では、ターゲット企業の主要な資産や事業部門を売却することで、企業価値を低下させ、買収者の興味を失わせる手法がある。
ホワイトナイトの今後の展望
今後、ホワイトナイト戦略は、グローバル化や経済の不確実性が高まる中で、ますます重要な役割を果たすと考えられる。特に企業間の競争が激化し、買収がますます一般的になる中で、ターゲット企業が自社の独立性を守るための手段として、ホワイトナイトの活用が増加する可能性がある。さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも、持続可能な企業価値を守るために、ホワイトナイトの存在が注目されていくであろう。
まとめ
ホワイトナイトは、敵対的買収から企業を守る友好的な買収者であり、企業価値を維持するために重要な役割を果たす。