デコイラー
デコイラーは、金属コイルから帯鋼を安定して繰り出し、プレスラインやレベラーライン、ロール成形ラインなど下流設備へ供給する巻出し機である。目的は一定張力での供給と座屈・蛇行防止であり、生産性と板品質の両面で要となる。一般にマンドレルの内径拡張でコイルを保持し、制動または駆動により周速を制御する。補助機構としてホールドダウンアーム、ピール装置、コイルカー、側板ガイド、ピンチロールなどを備え、ラインの自動化と段取り時間短縮に寄与する。別称にアンコイラー、巻出し装置、アンリール(unreeler)などがある。
役割と用途
主用途は、①プレス打抜・曲げ工程への連続供給、②レベラー/シャーによる定尺切断、③ロールフォーミングによる形鋼成形である。いずれも下流装置の要求周速と張力に追従し、板の波打ち・スクラッチ・座屈を抑えることが求められる。特に薄板では低張力での安定供給、厚板や高強度鋼では大きな慣性と反発力への対処が重要である。
構成要素(マンドレル・制動・補助機構)
基本構成は、内径拡張式マンドレル(油圧または機械拡張)、駆動・制動部(ブレーキまたはモータ)、ベース架台、センターハブ/コアアダプタ、補助機構群から成る。高頻度段取り向けにタレット式(ダブルヘッド)を採用する場合もある。ID規格はφ508やφ610が一般的で、コアアダプタで多サイズに対応する。
マンドレルの形式
四爪セグメント拡張式が標準で、コーン付きや片持ち(カンチレバー)構造もある。油圧拡張は重荷重・高頻度用途で有利で、拡張爪の均一押圧により偏芯を抑える。大径・重量コイルでは支持ロールやセンターピン併用でたわみを抑制する。
制動・駆動の制御
フリーホイール+ブレーキ方式はシンプルで保守性に優れる。張力は粉末/ディスクブレーキのトルクで調整し、下流のピットやダンサで周速同期を取る。センタードライブ方式ではACベクトル駆動やサーボでトルク制御し、半径変化に応じた周速補正(V=ω×r)を行う。薄物では微小トルク応答が重要となる。
補助機構(ホールドダウン・ピール・コイルカー)
ホールドダウンアームは巻頭の浮き上がりを抑え、ピール装置はバンド切断後の先端剥がしを自動化する。コイルカーはコイル芯高さ合せと安全搬送を担い、側板ガイドは蛇行抑制に寄与する。先端をピンチロールに受け渡し、必要に応じて直後にレベラーやフィーダと一体化(2-in-1/3-in-1)する。
ライン別の使い分け(プレス・レベラー・ロール成形)
- プレスライン:サーボフィーダと同期し、パイロットリリース時の張力変動を最小化する。
- レベラー/CTL:ループピットを深く取り、シャー前での速度平準化と板形状安定を図る。
- ロール成形:連続長尺を一定張力で供給し、成形スタンドの負荷変動に追従する。
仕様選定の指標と計算
選定は最大コイル重量、板幅、板厚、材質(降伏強さ、表面硬さ)、ID/OD、必要周速、設置スペースで決まる。トルク余裕、制動熱容量、拡張力、ベース剛性、パスライン高さ調整範囲を確認する。表面品質要求が高い場合は接触部材の材質・表面仕上げも選定要素となる。
許容荷重・トルク計算の要点
必要トルクTは板張力Fと半径rでT=F×rと表せ、rは巻径により刻々と変化する。制動発熱Qはトルク×角速度の時間積分で評価し、連続定格内に収める。支持強度は最大重量と偏荷重を考慮し、基礎ボルト・架台の許容をチェックする。
ループ制御と板張力
ループ制御にはダンサアーム、光電/超音波センサ、ピット深さ制御などがある。目標は下流装置の速度変動を吸収し、張力一定化で板形状と金型寿命を守ることである。薄板や表面敏感材では低張力・低摩擦の走行を優先し、ガイドロールの清浄とクラウン管理を怠らない。
安全と保全
コイルは大質量で回転体でもあるため、落下・飛散・巻戻りの危険がある。安全カバー、非常停止、バンド切断手順、立入禁止区画を明確化する。保全ではマンドレル爪の摩耗・割れ、拡張油圧系の漏れ、ブレーキライニングの摩耗、ベアリングのガタ、ピンチロールの偏摩耗を定期点検し、潤滑・芯出しを実施する。
よくある不具合と対策
- 蛇行:コイル端面のテレスコや側圧不足が原因。側板ガイド調整と受入検査強化で対処。
- 板傷:ロールの異物付着や粗面が原因。清掃と表面硬度適正化で抑制。
- 座屈:張力過多・ガイド不良。ループ制御ゲインとパスレイアウトを見直す。
- 巻戻り:ホールドダウン不足。アーム押圧と先端クランプを強化。
用語と別称
現場ではデコイラーのほか、アンコイラー、アンリール、巻出し機、ペイオフ(pay-off)などの呼称が使われる。周辺機器としてレベラー(leveler)、フィーダ(feeder)、シャー(shear)、ループピット(loop pit)などが併用され、ライン全体で板品質とタクトを最適化する設計思想が求められる。
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