グリップ止め輪|機械部品の軸固定に応用される保持リング

グリップ止め輪

グリップ止め輪とは、主にやシャフトの周囲に装着して固定や回転の抑制を行うために使用される部品である。本体が弾性を持つため、取り付けた部分に摩擦力を与え、軸方向へのずれを防止する働きを果たす。こうした機械要素は産業機器、自動車部品、工作機械など多岐にわたる場面で使われており、取り付けや分解が容易で再利用もできる点が注目されている。比較的安価で製造できる一方、適用環境や使用荷重の見極めが重要であり、適切な材質や形状の選定が求められる。今日では大量生産技術の進歩に伴い、精密かつ高強度なグリップ止め輪を安定的に供給できるようになっているが、一部の特殊環境ではカスタム形状を採用する場合もある。機械設計を行う際には、とのかみ合わせ具合や温度変化による伸縮リスクなど、複数の要因を考慮しながら部品を選定する必要がある。

定義

グリップ止め輪の定義としては、円筒状または溝付きの軸部品に対し、その外周部分を強固に保持することで軸方向の移動や回転を抑制するための締結要素を指す。形状はシンプルなリング状が多いが、内部に歯や特殊な凸部を持つ設計もある。名称に「グリップ」とあるように、比較的強い摩擦力で保持を実現する点に特徴がある。一般的なスナップリングやEリングと比べると、接触面が大きめに確保されるため滑り止め効果が高い。このような部品はベアリングを固定するのではなく、主に補助的な押さえや外れ防止の機能を担う点が注目される。

用途

グリップ止め輪は幅広い分野で用いられている。具体例としては、回転軸を備える工作機械や産業用ロボットのアーム部分、自動車のドライブシャフト周辺、さらには家電製品やオフィス機器のローラー固定部などが挙げられる。軸方向のストッパーとして機能するほか、急激な振動が生じる環境でも滑らないようにする目的で活用される場合もある。締結力を確保しながら取り外しや交換が比較的容易であるため、メンテナンス性を重視する現場では重宝される。例として

  • 自動車やバイクのギアシャフトの保持
  • コピー機やプリンターのローラー軸固定
  • ロボットアームの回転部への付加的安全策

などが代表的である。

構造

グリップ止め輪の構造は、通常はばね鋼や炭素鋼などの弾性を持つ金属材料をリング状に成形し、内径部分に滑り止めのための切り込みや凹凸を加工している。これにより、軸に装着した際に大きな面圧が発生し、強固な締結力を生む仕組みである。形状としては円形だけでなく、わずかに切れ目を入れた「スプリット型」も存在する。これにより、装着時にリングを広げてはめ込むことが容易になり、収縮した際に強いグリップ力が発揮される。表面処理としては防錆や耐摩耗を目的に亜鉛メッキやリン酸塩被膜が施される例が多い。

材質と製造方法

グリップ止め輪の材質には、主に機械的強度と弾性に優れる炭素鋼系のばね鋼が利用されるが、ステンレス鋼や高耐熱合金を用いるケースもある。これらは使用環境の温度や湿度、さらには化学薬品の存在などを考慮して選定される。製造方法としては板材をプレス加工でリング状に抜き取り、さらに端部の成形や熱処理によって適度な硬度と弾性を持たせる工程が一般的である。大量生産が容易でありながら、熱処理工程で歪みや割れが起こらないように管理する技術が要求される。特に高精度な寸法管理が必要となる高速回転部や精密機械の用途では、厳格な品質検査が行われる傾向にある。

取り付け方法

グリップ止め輪の取り付けは専用のプライヤーや取り付け冶具を用いて行われる場合が多い。スプリット型であれば、切れ目部分を広げて軸に通し、そのまま手で押し込むことで装着できる。軸には予め溝を設ける場合と、溝がなくとも強い摩擦力で固定する場合があるが、後者の場合は摩耗や傷が発生しやすいため慎重な対応が必要である。取り外しや交換が容易な点はメリットではあるが、繰り返しの取り付けや取り外しによってリングが変形するおそれもある。保守点検時には強度の低下が生じていないかを確認し、必要に応じて新品に交換することが推奨される。

活用上の注意点

グリップ止め輪を使用する際の注意点としては、第一に環境条件への適応が挙げられる。高温多湿な現場や薬品が飛散するラインでは、耐食性に優れたステンレス鋼を選ぶなどの工夫が必要となる。第二に取り付け時の摩耗や傷の問題があり、やリング自体の損傷を避けるために適切な工具の使用や圧入方向の確認が求められる。また、過大な荷重や衝撃を受けるとリングが変形または破損し、想定外のトラブルを引き起こすリスクもある。設計段階で安全率を考慮することはもちろんのこと、使用後の定期点検によって摩耗や破損の予兆をいち早く把握することが、信頼性の高い機器運用につながる。

グリップ止め輪単位 ㎜)2-101

グリップ止め輪は下記の寸法である。ただし、あくまでも参考値であり、jisやiso、メーカーカタログを参照すること。

呼び d D H t b
d₁ d₂ m n
最小
0.8 0.8 2 0.7 0.2 0.3 1をこえ1.4以下 0.82 0.3 0.4
1.2 1.2 3 1 0.3 0.4 1.4をこえ2以下 1.23 0.4 0.6
1.5 1.5 4 1.3 0.4 0.6 2をこえ2.5以下 1.53 0.5 0.8
2 2 5 1.7 0.4 0.7 2.5をこえ3.2以下 2.05 0.5 1
2.5 2.5 6 2.1 0.4 0.8 3.2をこえ4以下 2.55 0.5 1
3 3 7 2.6 0.6 0.9 4をこえ5以下 3.05 0.7 1
4 4 9 3.5 0.6 1.1 5をこえ7以下 4.05 0.7 1.2
5 5 11 4.3 0.6 1.2 6をこえ8以下 5.05 0.7 1.2
6 6 12 5.2 0.8 1.4 7をこえ9以下 6.05 0.9 1.2
7 7 14 6.1 0.8 1.6 8をこえ11以下 7.10 0.9 1.5
8 8 16 6.9 0.8 1.8 9をこえ12以下 8.10 0.9 1.8
9 9 18 7.8 0.8 2.0 10をこえ14以下 9.10 0.9 2
10 10 20 8.7 1.0 2.2 11をこえ15以下 10.15 1.15 2
12 12 23 10.4 1.0 2.4 13をこえ18以下 12.15 1.15 2.5
15 15 29 13.0 1.5(1.6) 2.8 16をこえ24以下 15.15 1.65
(1.75)
3
19 19 37 16.5 1.5
(1.6)
4.0 20をこえ31以下 19.15 1.65(1.75) 3.5
24 24 44 20.8 2.0 5.0 25をこえ38以下 24.15 2.2 4
呼び d D H t b
d₁ d₂ m n
最小

d₅にはめるときの外周の最大径

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