イーサネット|有線LANの標準規格

イーサネット

ローカルエリアネットワーク(LAN)における標準規格として広く普及してきたイーサネットは、高速通信や安定性、拡張性などに優れ、多様な環境で利用されている。IEEEによる標準化を受け、初期の10Mbpsから現在では100Gbpsを超える大容量通信にも対応しており、オフィスからデータセンター、さらに産業制御の分野に至るまで欠かせない存在となっている。

誕生と標準化の経緯

1970年代にパロアルト研究所(Xerox PARC)で開発されたイーサネットは、当初はCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)によるメディアアクセス制御を特徴としていた。後にデジタル・インテル・ゼロックス(DIX)連合が共同で仕様を整備し、さらにIEEEによってIEEE 802.3規格として正式に標準化が進められた。この標準化によって複数メーカー間の相互接続性が保証され、市場における安定的な普及と技術的進化が加速したのである。

物理層とフレーム構造

イーサネットはOSI参照モデルで言うところの物理層とデータリンク層に相当する技術を包括している。物理層ではツイストペアケーブルや光ファイバ、さらには最近ではバックプレーン用の特殊ケーブルなど、多様なメディアを介して通信が行われる。データリンク層にはMAC(Media Access Control)アドレスを用いたユニークなアドレス指定や、フレーム内でのエラーチェック機能が含まれており、フレームは宛先アドレス・送信元アドレスなどのヘッダ情報とデータ領域、CRCによるエラーチェックから構成される。

通信速度の向上

初期のイーサネットが10Mbpsから始まったのに対し、その後100Mbps(Fast Ethernet)、1Gbps(Gigabit Ethernet)、10Gbps(10 Gigabit Ethernet)と飛躍的に速度が向上してきた。近年では25Gbps、40Gbps、100Gbps、さらには400Gbpsの実装も可能となり、ハイパースケールデータセンターなど膨大な通信量を扱う現場でも対応できる柔軟性を備えている。通信速度の向上に伴い、物理層の信号処理やケーブル規格の進歩も必要となり、IEEE主導のワーキンググループが活発に標準策定を行っている。

スイッチングと全二重通信

初期の共有メディア型イーサネットでは、同時送信による衝突が問題となり、CSMA/CDによって再送やバックオフを行う仕組みが使われた。しかしスイッチングハブの導入により、各ポートが個別の通信チャネルを形成するため衝突が大幅に削減され、全二重通信(Full Duplex)が可能となった。これによりネットワーク効率が高まるだけでなく、帯域不足によるボトルネックを解消しやすくなった。スイッチの高機能化によってVLANやQoS(Quality of Service)などの機能も追加され、企業ネットワークの拡張性と信頼性が飛躍的に向上している。

セキュリティと運用管理

有線接続であるからといって無条件に安全とは限らず、スイッチレベルでのポート認証(802.1X)やアクセス制御リスト(ACL)などの機能によるセキュリティ対策が求められる。加えて、ネットワーク機器が増大すると管理が煩雑化するため、SNMP(Simple Network Management Protocol)やNetFlowなどの仕組みを導入して状態監視やトラフィック解析を行う事例が一般化している。また特に大規模環境では可用性を確保するため、冗長構成やリンクアグリゲーションなどを組み合わせた運用管理が実施されており、イーサネットスイッチが堅牢なインフラ基盤として進化を続けている。

産業用途への展開

近年では産業用イーサネットとして、工場のFA(Factory Automation)システムや車載ネットワークなど時間制御が厳密に求められる領域での利用が拡大している。産業用規格であるEtherCATやPROFINETなどはリアルタイム性の高い通信を実現し、従来のフィールドバスからの置き換えを進めてきた。こうした拡張規格の登場により、単なるオフィスLANにとどまらず、さまざまな分野でインフラとしてのイーサネット技術が活用されている状況である。

タイトルとURLをコピーしました