ねじり振動
ねじり振動とは、回転体や軸系に生じる角変位・角速度・トルクの時間的ゆらぎであり、クランク軸、減速機、プロペラ軸、電動機と負荷を結ぶシャフトなどで顕在化する現象である。曲げ振動と異なり主にせん断変形が支配し、トルク脈動、騒音、歯車の打音、キー溝周りの疲労破壊を誘発する。設計では固有振動数の把握、励振源の同定、許容応力と疲労強度の確認、そして抑制・回避策の適用が要点である。
定義と物理モデル
ねじり振動は、軸の角度θが平衡位置を中心に微小に往復する現象で、剛性k(ねじりばね)、粘性c(トルク・角速度比例)、慣性J(極慣性モーメント)で表す単自由度モデルが基本である。励振トルクT(t)が作用すると、角変位・角速度・角加速度が時間に依存して変化する。
支配方程式
支配方程式は J*d^2θ/dt^2 + c*dθ/dt + k*θ = T(t) である。自由振動でT(t)=0なら指数減衰し、強制振動でT(t)=T0*sin(ωt)なら共振近傍で応答が増大する。線形域では重ね合わせが成り立ち、周波数応答(ボード線図)で設計判断が容易になる。
固有振動数と減衰比
固有角振動数ωn=√(k/J)、減衰比ζ=c/(2√(kJ))である。一般に金属軸の粘性は小さく、ねじり振動は高Qとなり共振倍率が大きい。設計では励振周波数とωnを十分離す回避設計、もしくは意図的な減衰付与が重要である。
軸のねじり剛性
丸軸のねじり剛性は k=G*Jp/L で表す。ここでGはせん断弾性係数、Jpは極断面二次極モーメント(中実で πd^4/32、管で π(D^4−d^4)/32)、Lは長さである。kを高めるには材料Gの向上、直径増大、長さ短縮が有効である。
多自由度系とモード
複数ディスク・軸区間から成る系では多自由度となり、複数の固有振動数と節(ねじれゼロ点)を持つ。近似法としてエネルギー法、伝達マトリクス、Holzer法が用いられる。各モードでトルク分布が異なるため、弱点部の応力集中に注意を要する。
励振源の例
- 歯車かみあい周波数とその高調波(歯形誤差・偏心)
- 内燃機関の爆発位相むら・燃焼トルク脈動
- インバータ駆動のPWMトルクリップル
- 往復機械の往復慣性力によるトルク変動
- プロペラ・ポンプの流体脈動負荷
共振回避と設計指針
回転数rに対し励振次数nの周波数n*rがωnに接近すると共振する。運転速度域を定義し、危険速度(トルク共振)を避ける。始動停止で横切る場合は短時間通過、増減速勾配の最適化、減衰付与で応答を抑える。
応力と疲労
せん断応力は τ(r)=T*r/Jp、最大はτmax=T*R/Jpである。トルク変動が繰返されるためS-N曲線に基づくせん断疲労設計と安全率設定が必須である。キー溝・段付き・スプラインでは応力集中係数Ktにより寿命が低下する。
等価化と歯車列
歯車比nで負荷側を原動側へ等価換算すると、慣性はJ’ = J/n^2、ばねはk’ = k*n^2となる。バックラッシュや歯面剛性の非線形はサブハーモニクスを生みやすく、ねじり振動の予測に影響するため注意する。
計測と診断
- ねじり角計・ひずみゲージ・トルクメータによる直接計測
- ロータリエンコーダで角速度リップルを取得しFFT・オーダートラッキング
- マイクや加速度計の相関でかみあい次数を同定
- PSDで常時監視し、兆候保全(CBM)に活用
対策とチューニング
- ゴム継手や粘性ダンパでcを付与し共振倍率を低減
- TMD(同調ねじり動吸振器)でピークを狙って吸収
- 軸径・材質・長さを調整しkとωnを再配置
- フライホイール追加でJを増やしトルク脈動を平滑化
- 歯車精度向上・電動機制御(FOC等)で励振源を低減
設計プロセス例
- 運転速度域と負荷プロファイルを定義
- J,k,cを見積もり単/多自由度モデル化
- 固有値解析とモードごとの応力評価
- 主要励振(次数)との離隔を確認(マージン設定)
- 必要に応じ減衰付与・TMD配置・寸法再設計
- 過渡応答解析で始動停止や衝撃荷重を検証
- 試作機で実測・同定しモデルをアップデート
代表的な失敗様相
ねじり振動の共振で歯車のピッチング・スコーリング、キー溝起点の疲労破断、ボルトの微小回転繰返しによる緩み、軸継手のゴム体発熱・劣化などが生じる。起点は小さな偏心やバックラッシュ、潤滑不良などの複合である。
数値解析の要点
FEMやMBDでは境界条件と接触剛性の設定が支配的である。減衰はRayleigh型や摩擦モデルを併用し、微小すきまは非線形接触で表現する。時間積分は励振次数を十分分解できるΔtを選び、メッシュは応力集中部で細分化する。