こう配キー|テーパ構造で固定力を高めるキー要素

こう配キー

こう配キーとは、機械の回転軸歯車やプーリーなどの機械要素を結合する際に用いられる機械要素の一種であり、テーパ(傾斜)形状をもつキーである。主に中小型の軸機構に使用され、軸方向に圧入または打ち込みによって取り付けられる。標準的なキーに比べて取り付け・取り外しが容易であるとされるが、使用目的や構造に応じた適切な設計が求められる。

こう配キーの構造

こう配キーの最大の特徴は、その長手方向に対して一定の勾配を持つことである。通常は1/100程度のテーパ角が設けられており、キーを軸方向に打ち込むことで自然と相手部品との密着性を高めることができる。この構造により、固定力が高まるとともに、キー自体の自動ロック作用も働く。

使用される場面

こう配キーは、回転運動を伝達する軸部の結合に広く用いられている。たとえば中小型モーターのシャフトとプーリー、ギアの連結部に採用されることが多い。特に、頻繁な着脱が求められる装置や、分解・整備が必要な構造に適している。

こう配の角度

こう配キーのこう配角度は、一般に1/100(1%)程度である。これは、軸方向に挿入した際に無理なく挿入できると同時に、運転中の振動や荷重で容易に抜け落ちないバランスを考慮して設定されている。こう配が大きすぎると抜けやすくなり、小さすぎると挿入が困難になる。

こう配キーと平行キーの違い

平行キーは、断面が完全な長方形であり、挿入にはキー溝との精密な一致が求められる。一方、こう配キーは軸方向のテーパにより挿入が容易で、固定も確実である。反面、打ち込みによって軸を傷めるリスクがあるため、使用には注意が必要である。

取り付け方法

  • こう配キーの細い方を軸側に向け、キー溝に仮挿入する
  • ハンマーなどで軸方向に軽く打ち込んで固定する
  • 過度な打撃は避け、適切な挿入力を確認する

取り外し方法

  1. こう配キーの突出部分にプーラーや専用工具を当てる
  2. 軸方向に引き抜くことで、簡単に取り外し可能
  3. 固着している場合は、軽く叩いて緩める

こう配キーの材料

こう配キーの材料には、一般に炭素鋼(S45CやS50C)が使用される。必要に応じて焼き入れなどの熱処理が施され、摩耗や変形を防止する。特殊な用途では、ステンレスや非鉄金属製のこう配キーも使用されることがある。

メリット

  • 挿入・抜去が容易で作業効率が高い
  • 自然なロック作用により安定性が高い

デメリット

  • 打ち込み時の過負荷により軸を損傷する可能性がある
  • 高精度を求められる場合には適さないことがある

設計上の注意点

設計においては、こう配キーを使用する軸とキー溝の寸法精度、材料の硬度バランス、こう配角度の正確な管理が重要である。また、キーの打ち込み方向や作業スペースを確保するために、全体構造との干渉も考慮する必要がある。

トラブル事例

過去の事例では、過剰な打ち込みによって軸に割れが生じたケースや、こう配角度を誤って逆向きに挿入したことで固定力が不足し、回転伝達に失敗したケースがある。これらは設計段階または組立工程でのヒューマンエラーによるものである。

類似要素との比較

他のキー形式である、平行キーはめ合いキースプライン軸などと比較して、こう配キーはコストや組立性の面で優位性がある。特に簡易的な回転力伝達や仮設機構において有効である。

産業界での利用実例

製造業における搬送装置、食品機械、建設機械の駆動部などにおいて、こう配キーは広く使われている。とくに軽中荷重の用途において、部品のメンテナンス性を高める要素として活用されている。

寸法と標準規格

こう配キーには、JIS B1301などの国内規格が存在する。これにより、軸径に応じたキーの寸法、こう配、溝幅などが標準化されており、設計・製造における互換性が確保されている。代表的なサイズには、4×4×20mmや6×6×30mmなどがある。

こう配キーの形状および寸法(単位㎜)2×2-(24×16)

キーの呼び寸法
b×h
キー本体
b h h1 c l
基準寸法 許容差
(h9)
基準寸法 許容差
2×2 2 0
-0.025
2 0
-0.025
h9 0.16~0.25 6~30
3×3 3 0
-0.025
3 0
-0.025
h9 0.16~0.25 6~36
4×4 4 0
-0.030
4 0
-0.030
h9 7 0.16~0.25 8~45
5×5 5 0
-0.030
5 0
-0.030
h9 8 0.25~0.40 10~56
6×6 6 0
-0.030
6 0
-0.030
h9 10 0.25~0.40 14~70
(7×7) 7 0
-0.036
7.2 0
-0.036
h9 10 0.25~0.40 16~80
8×7 8 0
-0.036
7 0
-0.090
h11 11 0.25~0.40 18~90
10×8 10 0
-0.036
8 0
-0.090
h11 12 0.40~0.60 22~110
12×8 12 0
-0.043
8 0
-0.090
h11 12 0.40~0.60 28~140
14×9 14 0
-0.043
9 0
-0.090
h11 14 0.40~0.60 36~160
(15×10) 15 0
-0.043
10.2 0
-0.070
h10 15 0.40~0.60 40~180
16×10 16 0
-0.043
10 0
-0.090
h11 16 0.40~0.60 45~180
18×11 18 0
-0.043
11 0
-0.110
h11 18 0.40~0.60 50~200
20×12 20 0
-0.052
12 0
-0.110
h11 20 0.60~0.80 56~220
22×14 22 0
-0.052
14 0
-0.110
h11 22 0.60~0.80 63~250
(24×16) 24 0
-0.052
16.2 0
-0.070
h10 24 0.60~0.80 70~280
キーの呼び寸法
b×h
キー本体
b h h1 c l
基準寸法 許容差
(h9)
基準寸法 許容差

こう配キーの形状および寸法(単位㎜)25×14-100×50

キーの呼び寸法
b×h
キー本体
b h h1 c l
基準寸法 許容差
(h9)
基準寸法 許容差
25×14 25 0
-0.052
14 0
-0.110
h11 22 0.60~0.80 70~280
28×16 28 0
-0.052
16 0
-0.110
h11 25 0.60~0.80 80~320
32×18 32 0
-0.062
18 0
-0.110
h11 28 0.60~0.80 90~360
(35×22) 35 0
-0.062
22.3 0
-0.084
h10 32 1.00~1.20 100~400
36×20 36 0
-0.062
20 0
-0.130
h11 32 1.00~1.20
(38×24) 38 0
-0.062
24.3 0
-0.084
h10 36 1.00~1.20
40×22 40 0
-0.062
22 0
-0.130
h11 36 1.00~1.20
(42×26) 42 0
-0.062
26.3 0
-0.084
h10 40 1.00~1.20
45×25 45 0
-0.062
25 0
-0.130
h11 40 1.00~1.20
50×28 50 0
-0.062
28 0
-0.130
h11 45 1.00~1.20
56×32 56 0
-0.074
32 0
-0.160
h11 50 1.60~2.00
63×32 63 0
-0.074
32 0
-0.160
h11 50 1.60~2.00
70×36 70 0
-0.074
36 0
-0.160
h11 56 1.60~2.00
80×40 80 0
-0.074
40 0
-0.160
h11 63 2.50~3.00
90×45 90 0
-0.087
45 0
-0.160
h11 70 2.50~3.00
100×50 100 0
-0.087
50 0
-0.160
h11 80 2.50~3.00
キーの呼び寸法
b×h
キー本体
b h h1 c l
基準寸法 許容差
(h9)
基準寸法 許容差

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